強みに基づいた人事を行うポイント

2014年05月13日

 このところ連続してドラッカーの『経営者の条件』の4章「人の強みを生かす」からご紹介しています。

 強みに基づいた人事を行うために四つの原則があります。四つの原則はp110~p127にわたって解説されていて、次の名称がつけられています。

 (1) 適切に設計されているか
 (2) 多くを要求する大きなものか
 (3) その人間にできることか
 (4) 弱みを我慢できるか

          『経営者の条件』 p110-127より引用


 節の名称は翻訳者の方がつけたようです。原文には節の名称はつけられておらず、いきなり文章が始まっています。

 (1)は当たり前のことのように感じますが、できない仕事を設計してはいけないということです。天才にしかできないような仕事を設計してあるとしたら、それは直さなければなりません。天才なんか想定していない、と思われるかもしれませんが、例えば並はずれて仕事ができるスーパーマン社長に合わせて仕事が設計されている場合があるのではないでしょうか。

 次の文章を参考にしてください。
 
 組織を評価する基準は天才的な人間の有無ではない。平凡な人間が非凡な成果をあげられるか否かである。

           『経営者の条件』 p113より引用


 「平凡な~」の文は、ドラッカーらしいですね。原書では次のように表現されています。
 
It is its capacity to make common people achieve uncommon performance.

”The Effective Executive” p80


 (2)について、まずは仕事の内容が常に変わるからです。大きな仕事を要求しているからこそ、変化に耐えられるのです。
 もう一つの理由は知識労働であるが故です。時間でする仕事とは違って、知識労働はどのくらいできるかが事前には分かりずらいです。したがって大きな仕事を要求することによって、強みを発揮できるようになるのです。

 (3)は、強みに焦点を合わせるためです。その人ができることから仕事をスタートせねばならない、とドラッカーは述べています。人事考課制度はそもそも人間の弱みに焦点を合わせて作られたものです。人を見るときには強みに焦点を合わせるべきです。
 人間性と真摯さがない人は他のあらゆるものを破壊する、と述べているのもこの部分です。

 (4)について、人は強みに基づいてしか貢献できませんし、成果をあげることはできません。したがって弱みは我慢しなくてはならないのです。
  
 次の文章によって、これらはまとめられています。

 かくして知識労働の時代においては、強みをもとに人事を行うことは、知識労働者本人、人事を行った者、ひいては組織のそのものにとってだけでなく、社会にとっても欠くべからざることになっている。

         『経営者の条件』 p127より引用


 強みに基づいた人事は組織だけでなく社会にまで影響を及ぼす、というドラッカーの大きな世界です。

  


 参考ブログ:仕事を設計する
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e1486936.html

 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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