人材の育成の意味

2014年04月10日

 ドラッカーが唱える三つの成果のうち、三つ目のご紹介です。

 第三の成果とは「人材の育成」です。

 『経営者の条件』第3章「どのような貢献ができるか」より引用します。

 第三の領域が人材の育成である。組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。
 したがって自らを存続させえない組織は失敗である。今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新していかなければならない。確実に高度化していかなければならない。
 そして次の世代は、現在の世代が刻苦と献身によって達成したものを当然のこととし、さらにその次の世代にとって当然となるべき新しい記録をつくっていかなければならない。

          『経営者の条件』 p83より引用


 原文では次のように表現されています。

Finally,organization is,to a large extent,a means of overcoming the limitations mortality sets to what any one man can contribute.An organization that is not capable of perpetuating itself has failed.An organization therefore has to provide today the men who can run it tomorrow. It has renew its human capital.It should steadily upgrade its human resources.The next generation should take for granted what the hard work and dedication of the generation has accomplished.They should then,standing shoulders of their predecessors,establish a new "high" as the baseline for the generation after them.

”The Effective Executive” p56-57


 冒頭部分「人材の育成」とまとめられていますが、原文の要点は以下の部分です。

 ・・・・・・組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である・・・・・・

 ”organization is a means of overcoming the limitations mortality sets to what any one man can contribute"


 「生身の」です。

 かつて、組織というものが出現する前は、自分の能力は自分でしか伸ばすことができませんでした。自分を自分でなんとかするしか方法はなかったのです。もともとその個人がもっていた能力がその人の人生を決めてしまう要素が大きかったわけです。

 組織が出現して、人間は組織を道具として使うことができるようになりました。

 一人ではできないことも、組織という道具を使うことでできるようになり、可能性が広がったのです。

 したがって、組織に所属する個人は、組織を道具として使って、自らの可能性を追求することができますし、組織への貢献を通じて、成果をあげることができます。

 一方、組織は所属する個人の能力を組織を通じて引き上げることによって、社会的な価値を生み出すと同時に、組織の成果を飛躍的に上げることができるようになったのです。

 人材育成とは、組織の内部での出世や成長のためのものではなく、あくまでの外部の成果をあげるための育成であるわけです。

 社内だけでしか使えない内向きな人材を育成するのであれば、単なる社内研修で済みます。
 
 あくまでも「生身の」人間の限界を超える育成を念頭におかねばなりません。


 mortality 死ぬべき運命 perpetuate 永続させる 不滅にする dedication 献身 predecessor 先輩、前任者、
 リーダーズ英和辞典第2版(研究社)

  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

お知らせ
Hitoshi Yonezu
P.F.ドラッカーを読む読書ブログです。
 
ささや
< 2025年05月 >
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8