ドラッカーが唱える三つの成果について、連続してご紹介しております。
三つの成果のうち、第二の成果とは「価値への取り組み」です。
『経営者の条件』第3章「どのような貢献ができるか」より引用します。
一方で組織には価値への取り組みが必要である。これは、ビタミンやミネラルの役割にあたる。組織は方向性をもたなければならない。さもなければ混乱し、麻痺し、破壊される。
第二の領域にある価値への取り組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのようにアメリカの一般家庭のために最も安く最も品質のよい財やサービスを見つけ出すことである場合もある。
もちろん価値への取り組みもまた、直接的な成果と同じように明白なものばかりとは限らない。
『経営者の条件』 p82より引用
原文では次のように表現されています。
But any organization also needs a commitment to values and their constant reaffirmation,as a human body needs vitamins and minerals. There has to be something "this organization stands for,"or else it degenerates into disorganization,confusion,and paralysis.In a business ,the value commitment may be to technical leadership or (as in Sears Roebuck)to finding the right goods and services for the American family and to procuring them at the lowest price and the best quality.
”The Effective Executive” p56
「価値への取り組み」は原書55ページでは"building of values and their reaffirmation"と表現されていました。
価値を築き上げ、その再確認を継続して行う、ということです。
56ページではcommitment to values and their constant reaffirmationと表現されています。
commitmentは日本語でも「コミットメント」としてよく使われるようになりましたね。
commitment は、promise(約束する)という概念よりももっと厳しいもので、言質に対する責任や拘束が含まれています。コミットすると宣言したということは、必ずやらなければならないということで、もし出来ないのであれば、職を辞する覚悟をもたなくてはなりません。
原文を読むと「価値への取り組み」は「方向性をもつこと」 (There has to be something "this organization stands for,")と同義にも読めます。
企業がどのような方向へ向かうのか?ということは、どのような価値観をもつかということとよく似ています。
「価値への取り組み」は分かりずらい部分です。
「価値への取り組み」はイノベーションのことだと説明される方もおられます。
組織はどのような価値観をもって、どの方向へ向かうか、明確に樹立し、それを継続して再確認していかねばなりません。
これはトップマネジメントがコミットせねばならないことです。
さもなければ、組織は終結してしまいます。
build 築き上げる、樹立する、拡大する constant 絶えず続く、不変の
reaffirmation 再確認 commitment 言質に由来する拘束 stand for ~に向かう
リーダーズ英和辞典第2版(研究社)

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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