ドラッカーの『経営者の条件』第3章「どのような貢献ができるか」より引用します。
貢献に焦点を合わせることによって、自らの狭い専門やスキルや部門ではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向ける。自らの専門やスキルや部門と、組織全体の目的との関係について徹底的に考えざるをえなくなる。政策にせよ、医療サービスにせよ、自らの組織の産出物の究極の目的である顧客や患者の観点から物事を考えざるをえなくなる。その結果、仕事や仕事の仕方が大きく変わっていく。
『経営者の条件』 p79より引用
原文では次のように表現されています。
The focus on contribution turns the executive's attention away from his own specialty, his own narrow skills,his own department, and toward the performance of the whole. It turns his attention to the outside,the only place where there are results.He is likely to have to think through what relationships his skills,his specialty,his function,or his department have to entire organization and its purpose.He therefore will also come to think in terms of the customer,the client,or the patient ,who is the ultimate reason for whatever the organization produces,whatever it be economic goods,governmental policies,or health services.
”The Effective Executive” p53
ドラッカーは「成果は外の世界にしか存在しない」としばしば述べています。
英文では"the outside,the only place where there are results"と表現されています。
外の世界に成果が存在する、とはどういうことでしょうか?
自分の仕事や、専門の領域に焦点を合わせることは、自分の仕事だけが進んで、自分だけが楽になることです。
自分の仕事が終わったら、周りのことは全く気にしないで、さっと帰ってしまう人がいるかもしれません。帰らないとしても、自分は余裕になって高みの見物をしている人がいるかもしれません。
そのような人は外の世界の成果を見ていません。自分の成果、内部の成果だけを見ているのです。
自分の仕事が組織の中でどのような役割を果たしているか?と考えたとき、組織に対する自分の貢献を意識するようになります。組織の目的達成に自分が関わっていることを認識するのです。
そうなると、自分の仕事が外部にある顧客や社会にとってどのような成果をあげるか?と組織の成果を考えざるをえません。
いま、組織という場所において、一人でできる仕事はそうそうありません。
顧客や社会は、組織の中の誰か一人の働きを求めているのではありません。組織としての成果を求めています。
組織は、所属する個人に対して、その組織の成果は何か?を明確に示さなくてはなりません。
組織に所属する個人は、組織が外部に対して成果をあげることに、精いっぱいの貢献をせねばなりません。

参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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