マニュアルワーカー

2013年12月27日

 ドラッカーの『経営者の条件』第1章「成果をあげる能力は修得できる」より引用します。
 
 肉体労働者は能率をあげればよい。なすべきことを判断してそれをなす能力ではなく、決められたことを正しく行う能力があればよい。肉体労働者の仕事は、靴のような生産物の量と質で評価できる。われわれはすでに、それらの方法についてはこの一〇〇年間に多くを学んできた。その結果、肉体労働の生産性を大幅に向上させた。

          P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 p19より引用


 原書では次のように書かれています。

 For manual work, we need only efficiency; that is, the ability to do things right rather than the ability to get the right things done. The manual worker can always be judged in terms of the quantity and quality of a definable and discrete output, such as a pair of shoes. We have learned how to measure efficiency and how to define quality in manual work during the last hundred years- to the point where we have been able to multiply the output of the individual worker tremendously.

”The Effective Executive” p2


 「肉体労働者」と翻訳されている言葉は、原書ではmanual worker (マニュアルワーカー)です。

 肉体労働者というと、体力を使う仕事のように思えてしまいますね・・・・・・

 ドラッカーの意図するところは違います。

 結果としての量と質だけを求められるような仕事をする人のことをマニュアルワーカーと呼んでいるのです。

 靴の製造が例示されていますが、現代であれば、途上国の工場で指示命令だけに従って働いている工員さんのイメージです。

 このような職場では、労働者は生産物の量と質だけによって評価され、時間当たりにいかに多くの靴を作ることができるかが求められます。その人の手先の器用さや熟練などが評価を左右します。

 かつては労働者の健康が脅かされるくらい働かされることもあり、生産性が徹底的に追求されました。肉体労働(マニュアルワーク)の限界は見えています。

 では、靴の製造といえば、すべての向上が肉体労働(マニュアルワーク)なのでしょうか?

 これも違います。

 同じ靴を製造するのでも、製造に知識を利用するかどうか?です。

 ある労働者が自身の生産性をあげるために、一つの行程としていたものを二つの行程に分けたり、製造に便利な新しい道具を開発したりしたとします。

 これは今までの経験から得た情報を知識に変換し、仕事に応用したことです。

 同じことを繰り返すだけの肉体労働(マニュアルワーク)とは全く別の切り口です。

 この切り口から見た世界には、まだまだ無限の可能性が広がっています。

 ドラッカーが唱えた「知識労働」の端緒ではないでしょうか。  

 「知識労働者」とは、研究者や大学教授のことを指すのではありません。

 どんな業種のどんな職種の方も、知識を使って仕事ができるのです。

  

 
 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

 Hitoshi Yonezu at 10:00  | ドラッカー

お知らせ
Hitoshi Yonezu
P.F.ドラッカーを読む読書ブログです。
 
ささや
< 2025年05月 >
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8