昨日ご紹介した引頭麻実さんの編著書『JAL再生 高収益企業への転換』には、稲盛和夫さんの言葉として、JALの再生について本社の経営企画という部署の問題点が指摘されていました。
就任当初、JALで私が感じた違和感は、本社の経営企画というところがどうも中枢で、ここであらゆる企画がなされ、さまざまな指示が出てくるということでした。経営企画にいた人たちが、過去にいた人たちも含めて全組織にいるわけです。
その人たちは、エリート集団を形成していて、非常に頭がよい。よい学校を出て、JALのなかでもエリートコースを歩んできた人たちでした。非常に丁寧な言葉遣いではあるが、まさに慇懃無礼というか、内心はそうではないということが、顔にも態度にも全部出ているわけです。そして、どちらかというと冷たい。理論ばかり、理屈ばかりです。そんなことで、3万人からの従業員を任せるわけにはいかない、そう感じました。
『JAL再生 高収益企業への転換』 p146より引用
本社スタッフはどういう存在であるべきなのか、ドラッカーは『現代の経営(下)』で次のように述べています。
したがって、本社スタッフの仕事は三つに限定すべきである。その第一は、おそらく最も重要かつ貢献の大きな仕事として、現業の経営管理者がサービス機能に携わる専門家に期待できることが何かを明らかにすることである。第二に、現業の経営管理者が選んだサービス機能の専門家を訓練することである。第三に、調査することである。
本社スタッフは、いかなる場合にもマネジメント上の責任をもってはならない。また経営管理者に採用させるためのプログラムを作ってはならない。現業の経営管理者に売り込んだプログラムの数で本社スタッフを評価してはならない。ひと言でいうならば、本社スタッフは、現業の経営管理者のためのサービススタッフではなく、トップマネジメントのための助手である。
『現代の経営(下)』 p79-80より引用
私も大企業に在籍したことがありますが、自分たちの方が偉いと勘違いしている本社スタッフもいました。所属する支店から本社へ仕事でいくときには、なんとなく緊張感がありました。
JALの事例が示すように、現場が分からない人が物事を決めるようになったら、問題の始まりです。
その典型は、本社スタッフが経営の権限を持ってしまうことなんですね。
このことをドラッカーは1954年発行の『現代の経営』で既に指摘していたのです。
企業において本社の企画部門はエリートコースとか言われて囃されることがありますが、気をつけなくてはならないことです。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
『現代の経営[下]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
『JAL再生 高収益企業への転換』 引頭麻実 (日本経済新聞出版社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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