上田惇生さんのご著書『ドラッカー入門』の第4章「万人のための帝王学を求めて」より引用いたします。
マネジメントにとって、利益とは、明日さらに優れた事業を行っていくための条件である。同時に、仕事ぶりを測るための尺度である。目的ではない。条件の方が目的よりもきつい。生きる目的は達せられなくとも生き続けられるが、生きる条件を達せられなければ潰れるしかない。
私自身、経団連で働いていた三十数年の間、金儲けのために企業を経営しているなどという経営者には会ったことがなかった。ドラッカーのいうように、利潤動機なるものは存在しない。利益とは、企業が社会の公器としての役割を果たし続けていくためのコストであり、条件である。そして成果の判断基準である。
『ドラッカー入門』 p129-130より引用
「利益は企業の目的ではなく存続のための条件である」とはあまりにも有名なドラッカーの考え方です。
上田さんが述べているように、目的よりも条件の方が厳しいというのは本当にその通りですね。
簡略化した例をあげますと「幸せに生きる」という目的があったとしても、生きるための条件である「空気」がなくては、生きることさえできないのと同じです。
利益とは空気と同じようになくてはならないものですが、目的にすべきものではないのです。空気を独り占めにすることも許されません。
ドラッカーが述べている「組織を通じて社会で成果をあげる」ということは、企業が公器であることを示しています。
企業を経営するという以上は、どんなに小さな企業であっても社会のお役に立つという覚悟が必要なのです。
『ドラッカー入門』はドラッカーの一連の著書の訳者として有名な上田惇生さんが、ドラッカーの著書を網羅的に紹介してくださる本です。題名は「入門」ですが、ドラッカーの著書を一冊読んでから、この本に取りかかったほうがよいかな、と思います。
上田さんの言葉で分かりやすくまとめられているので、本書を読むのとまた違う気づきを与えてくれます。

参考文献:『ドラッカー入門』 上田惇生 (ダイヤモンド社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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