個々の人間の問題か組織の問題か

2013年05月27日

 ドラッカーの『経営者の条件』の第6章より引用します。

 スローンがその著『GMとともに』でいっているように、一九二二年当時のGMは事業部長たちの割拠する連邦だった。彼らのそれぞれがGMとの合併前には社長だった。彼らは事業部を自分の会社としてマネジメントしていた。

 そのような状況においては、対処の仕方は二とおりしかないはずだった。一つはお引き取りいただくことだった。これは、ジョン・D・ロックフェラーがスタンダード・オイルをつくり、J・P・モルガンがUSスチールをつくった方法だった。もう一つは彼らに指揮を執らせ続けることだった。これはいわば調整された無政府状態とでもいうべきものだった。

          P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第6章p162より引用


 スローンが社長に就任したころのGMはこのような状況下にあり、崩壊寸前だったそうです。

 しかし当時、スローン以外の誰もが、この問題を個々の人間の問題として理解し、勝利者となる者が握る権力によって解決されるべき問題と見ていた。これに対しスローンは、問題を組織構造によって解決すべき組織の問題として見た。そして彼が構想した組織構造が、運営における自治と、方向付けにおける統制のバランスを図るものだった。

          P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第6章p162より引用


 組織に問題が起こった場合、まずはそこに属する人間に問題があるのではないか、と考えてしまうのが人情です。

 特に経営者の場合は、もっと有能な人間はいないのか?もっと適切な人間を採用したらどうか?という視点で組織を見てしまいます。

 本当にそうでしょうか?部下のもつ属人的な能力に委ねてしまっていいのでしょうか?

 その解決方法を選択した場合は、しばらくしてから同じような問題が再発する可能性があるのです。

 ドラッカーは「運営における自治と、方向付けにおける統制のバランスを図る組織構造を構想した」のです。

 組織の問題を人間の問題として片づけるのは簡単で実行しやすいですが、その場限りの解決に終わる場合があります。(中小企業の場合は優秀な人物を採用するのは現実的には大変困難です。)

 力を込めて組織を改革しなくては、企業としての長期的な解決にならないのではないか、と考えます。

  


 参考文献:
 『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
 

 ”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
 

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