ドラッカーの『経営者の条件』の第6章に、1910年代から20年代にかけてベル電話会社を世界最大の電話会社に育てたヴェイルの事例が紹介されています。
ヴェイルは社長に就任するとすぐに「われわれの事業はサービスである」をベルの社訓にしたそうです。
このような考え方は当時としては異端だったそうですが、ヴィエルはサービスを提供することが事業であり、そのサービスを可能とし利益をあげることがベルのマネジメントだ、と考えたのです。
しかも彼は、このことを説いただけではなかった。彼は実際に経営管理者とその活動を評価するための基準をつくり、彼らがもたらした利益よりも、提供したサービスを評価するようにした。ベルの経営管理者には、公衆に対するサービスにおいて成果をあげる責任があるとした。そして、最高のサービスが最適の利益をもたらすようベル全体を組織し、財務を手当てすることがトップマネジメントの職務であるとした。
P.F.ドラッカー 『経営者の条件』 第6章p156より引用
重要なところは、利益よりもサービスを評価したことです。サービスが利益よりも先なのです。
ヤマト運輸の小倉昌男さんは『小倉昌男 経営学』において「サービスが先、利益は後」と述べています。小倉さんはこの考え方を信念にして、採算が取れるはずがないと言われていた宅急便の事業に参入し、大成功を収めました。
ヴェイルとまったく同じことをされていたわけです。
売上げとか利益とか数字が出てくるのは、お客さまに喜んで頂いた後のことです。先に数字を考えてはお客さまに喜んで頂くことはできないでしょう。
ほとんどの事業において「お客さまにサービスしよう」という精神が始まりになっていたはずです。
さまざまな利害関係者との接触や経営の浮き沈みによって、この精神が変化していってしまいます。
私は創業者ではありませんので、創業者がどんな想いで仕事を始めたのだろうか・・・・・・と想像し、自戒しています。

参考ブログ:「第10回ビジネス読書会」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e858251.html
参考文献:
『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
”The Effective Executive” P.F.Drucker (Harper Business)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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