『自分の中に毒を持て』を読んで

2013年05月02日

 岡本太郎さんのご著書『自分の中に毒を持て』を拝読いたしました。

 岡本さんは有名な洋画家ですね。1911年東京生まれで、1996年にお隠れになりました。パリ大学に在学中、ピカソの作品に衝撃を受け、抽象芸術運動に参加し、帰国後、前衛的な作品を次々と発表し、国際的にも高い評価を受けました。

 大阪万博の会場跡地に残されている「太陽の塔」が岡本さんの作品であることは大変よく知られていますし、私は子供のころにテレビでよく耳にした「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」、「芸術は爆発だ」という言葉が鮮明に記憶に残っています。

 この本は1988年に新書版で発行され、1993年に文庫本になったものです。私の手元にあるものは2012年10月発行の第46刷です。ずっと売れ続けている本ですね。

 岡本さんはいまだに爆発している・・・・・・物理的にはお隠れになりましたが、本を読む限り、まだ生きている、としか私には言いようがありません。

 日本では独自な表現や不協和な発言をする者は排除されるという歴史がありました。

 岡本さんはいいます。
 
 いままでは、謙虚であるということが世渡りの第一歩みたいなものと考えられてきた。だが僕の考え方では、それは非常に傲慢だとはいえないが、不遜だと思う。というのは、自分はどのくらいの能力があり、どのくらいのことをすべき器であるかということを見極めようとしないで、つまり、自分のことが自分でわからないのに、勝手に自分はダメだと見切り、安全な道をとってしまう。
 このように自分を限定してしまい、その程度の人生で諦めてしまえば、これは安全な一生。だが、自分がいまの自分を否定して、更に進み、何か特別な自分になろうとすることには大変な危険が伴う。
 そして、ほとんどの人はこの危険に賭けようとはしない。

                  『自分の中に毒を持て』 p22より引用


 ほとんどの人は、周りの雰囲気に流されて、他人と同じ行動をするようになり、だんだんとつまらない人間になってしまいます。
               
 岡本さんは常に挑戦する人生でした。 

 俗に”失敗は成功のもと”という。そんな功利的な計算ではなく、イバラの道に傷つくことが、また生きる喜びなのだ。通俗的な成功にいい気分になってはならない。むしろ、”成功は失敗のもと”と逆にいいたい。その方が、この人生のおもしろさを正確にいいあてる。
 たんたんとした道をすべっていくむなしさに流されてしまわないで、傷つき、血のふき出る体をひきずって行く。いいようのない重たさを、ともども経験し、噛みしめることだ。それが人生の極意なのである。

            『自分の中に毒を持て』 p116 より引用

 
 
 力強いですね・・・・・・

 いわゆるバブル経済のころに書かれたものですが、浮ついている感じはまったくありません。

 子供のころに漫然と抱いていた「おもしろいおじさん」というイメージは吹っ飛びました。

 いまでは岡本さんのようなことを言える人はいないでしょう。こういう常識を壊すような考え方はあまり受けないのかもしれません。私はこの本は生きていると思います。いま読むほうが覚醒します。

 みなさまもぜひご一読ください。

  


 参考文献:『自分の中に毒を持て』 岡本太郎 (青春出版社)
 

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