原田泳幸さんのご著書『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』を拝読いたしました。
原田さんは日本マクドナルドホールディングスの代表取締役会長兼社長兼CEOです。7期連続減収だった既存店売上を一転して8期連続増収に改善した立役者です。
原田さんのご著書はこのブログでも何度も紹介しておりますが(このブログの右欄の下に「ブログ内検索」という機能がありますのでキーワードで試してみてください)、読む度に新しい発見があります。
巻末にはファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんとの対談も収められています。
一般的には創業社長のほうが立派だと思われがちですが、原田さんのように雇われ社長(ご自身でそう書いておられます)であっても、企業の経営はあくまでも成果によって評価されるべきで、社長になった経緯はあまり関係がないなあ、と思います。
マクドナルドで値上げをしたときに、原田さんはどのクルーでもお客様に理由を説明できるようにと指示をしたそうです。
あるとき店に出向き、三人の若い女性クルーに「値上げした理由について、お客さまに聞かれたら、何て答えているの?」と聞きました。
一人目は度忘れをして答えられず、二人目は「今回は○○の原材料を△△して、□□のように形を変えました」と答えました。三人目は「おいしくなったからです」と答えたそうです。
私が問題にしたのは、一般の人が分からないような論理で売り手が値上げの理由を説明しているということのなのです。私は、「論理的な理由を書いて、それをお客様に説明するように」なんて言うわけがありません。つまり送り手の論理とならないようにきちんと徹底してほしいということだったのです。
『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』p62より引用
なぜこうなってしまうのでしょうか。
「なぜ値上げになったのですか?」と聞かれたら、「おいしくなりましたよ。お客様、ぜひ召し上がってみてください。」と説明するのです。これが商売というものです。そのトークが意外とできていない。私はマクドナルドの社員にこの商売根性とか商売の感覚がなぜ欠如しているのかと自問自答しました。
理由は、いわゆる訪問販売の経験がないからです。プッシュ型の営業の経験者がなく、プル型の商売だけを経験しているのです。
『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』p63より引用
店舗の営業をしているとこの感覚は忘れがちになってしまいます。
昔の人たちはこの精神で商売をつくりあげてきたはずです。
かつてうちの会社に出入りしていたお取引先さまの中にも「よくこんな嘘をつけるなあ・・・・・・」というくらい自分の論理でものを売るおじいさんがいました。そのおじいさんにはなんどもだまされて腹立たしい反面「これで戦後の高度成長期にのってきたんだろうなあ・・・・・・」と思うと、自分の人の良さもばかばかしくなって、少し許す気持ちにもなりました。
今ではもうそんな威勢のいい人はいませんね・・・・・・
お客さまに対して誠実であるのは基本条件ですが、最近日本に元気がないのはこういう精神がなくなったということもあるのではないでしょうか。アジアの新興国へ行けば、いまだに買い物はだまし合いのようなものです。
経営をなさっている方は、原田さんのご著書はぜひ一度ご覧になってください。

参考文献:『大きく、しぶとく、考え抜く。原田泳幸の実践経営論』 原田泳幸 (日本経済新聞出版社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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