新聞記者が雇用や賃金の問題について記事を書こうとするとき、日本ではおそらくほとんどの記者が厚生労働省に取材に行くと思います。
では、アメリカの記者がアメリカの同じく雇用や賃金の問題について取材をするときはどこへ行くのでしょうか?
アメリカ連邦準備制度委員会、いわゆるFRBなのだそうです。
アメリカにおいてはFRBが雇用に対して最も重い責任を負っています。
高橋洋一さんのご著書『日本人が知らされていない「お金」の真実』より引用します。
「FRBの金融政策目的には①雇用の最大化、②安定した物価、③中程度の長期金利を保つ、の3つがあり、その実現のために、通貨の信用を保ちつつ『長期的な通貨の増大』をする」となる。
つまり、「雇用の最大化」は、物価や金利のコントロールと並んで、アメリカの中央銀行に法律で課せられた重要な仕事なのである。FRBは「長期的な通貨の増大」をもって雇用を最大化する法的な義務を負っているのだ。
『日本人が知らされていない「お金」の真実』p18より引用
EUの中央銀行であるECB(欧州中央銀行)もFRBと同様に雇用に責任を負っていますし、イングランド銀行も雇用の政策に密接に関連しているのだそうです。
一方で、日本の中央銀行である日本銀行はどうか。日本銀行の設置法である「日本銀行法」には、次のように書いてある。
「第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」
つまり、日本銀行には「物価の安定」だけが課せられており、雇用を増やすといった義務はない。このほか、日銀法のどの条文を読んでも、「雇用」については一切触れられていないのだ。
しかし世界では、「雇用」について中央銀行が責任を負うのはむしろ一般的である。日本銀行は、「雇用」についてまったくなんの責任もない、世界でも珍しい中央銀行なのだ。
『日本人が知らされていない「お金」の真実』p20より引用
高橋さんは、中央銀行が適切な施策を行えば雇用に関するさまざまな問題を解決できる、と述べています。
昨年政権が変わり、日銀が金融政策の変更を宣言しただけで、株式市場や為替市場に大きな変化が出てきました。
現実には何も変わっていないのに、宣言だけで大きな変化が出たのです。こういう状況は初めてではないでしょうか。
これからに大きな期待をこめたいと思います。

参考文献:『日本人が知らされていない「お金」の真実』 高橋洋一 (青春出版社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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