阿満利麿さんのご著書『法然入門』を拝読いたしました。
阿満さんは1939年生まれで京都大学教育学部卒業後、NHK入局、社会教養部チーフ・ディレクター、明治学院大学国際学部教授を経て、現在は明治学院大学名誉教授を務めておられます。
この本は浄土宗の開祖、法然房源空(1133年-1212年)の「専修念仏」の思想を解説したものです。うちの菩提寺は浄土宗ですので興味があって読んでみました。
いまでこそ浄土宗とか浄土真宗とか聞いても仏教の一宗派としか感じませんが、念仏を唱えるだけで救われるという専修念仏の教えは、当時の仏教界には大きな衝撃を与えました。
南無阿弥陀仏を唱えることによって極楽浄土に行くことができるという他力本願の考え方は、一見自分の幸せだけを願っているように思えてしまいますが、そうではないようです。
つまり、一切の善行を極楽に捧げるということは、自分がその力によって仏になるためではなく、仏になるのは阿弥陀仏の力によるのであるから、ひとえに浄土で仏になって、ふたたび生死の世界、つまり現実の世界に戻り、いまだ生死の束縛から自由になれない人々を教化して仏にするため、なのである。
浄土に生まれることだけを願い(「異事」をば願わず)、現世での善行のすべてを極楽に捧げるのは(自分がその善行の結果を受けるのではなく)、最終的には、一切衆生を救うためなのである。
『法然入門』より引用
法然の考え方がよくわかる本です。
菩提寺が浄土宗だという方はどうぞご一読ください。

参考文献:『法然入門』 阿満利麿 (ちくま新書)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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