言葉のレパートリーを広げる

2012年08月20日

 俳句には「写生」や「写実」という概念があります。

 千野帽子さんの『俳句いきなり入門』より引用いたします。

 現実の雪や桜を見るのは、そのほんとうの姿を記述するためではない。既存の「型」に含まれない表現、あるいは日常あまり言われない表現を見つけるためなのだ。
 つまり「ほんとうの姿」とやらを記述するためではなく、既存の「型」の蓄積という巨大な山の上に新ネタという小石を載せることができたらいいな~、という感じで見ることなのだ。現実を見るのは現実を報告するためじゃなくて、言葉のレパートリーを広げるためとしか私には思えませんけどね、どう考えても。

                   『俳句いきなり入門』より引用


 これは分かりやすい説明ですね。

 新聞などの俳句欄を読むと意味が分からない句も多いですが「おっ!この表現は!」という新鮮な表現の句がありますよね。

 千野さんはこの有名な俳句を紹介されています。

 鳥の巣に鳥が入ってゆくところ     波多野爽波

         
 よく見かける当たり前の光景を普通の言葉で表現しただけですが、このように俳句になると新鮮で、瞬間的に鳥の物語が浮かんできます。

 普段生活する言葉の中で新しい表現を試したら、相手にとっては意味が分からないですから、話が通じなくなってしまいます。

 言葉のレパートリーを広げることができる、新しい表現に挑戦できる、という意味で俳句はやはりアートなんだと思います。

  


 参考文献:『俳句いきなり入門』 千野帽子 (NHK出版新書)

 

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