緊急時のチェックリスト

2012年08月02日

 アトゥール・ガワンデさんの『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』に1989年に起きたユナイテッド航空の事故が紹介されていました。
 
 この事故は、ホノルルからニュージーランドのオークランドへ向かう乗客337名を乗せたボーイング機の電気システムが故障し、貨物ドアのロックが外れたものです。
 そのとき高度は22000フィート(6700メートル)を超えていましたので、気圧差により貨物ドアは一瞬で吹っ飛び、上部デッキの窓数個とビジネスクラスの座席5列が外に吸い出されました。9人の乗客が行方不明になってしまったそうです。
 ロックが外れてからドアが吹っ飛ぶまでの時間はわずか1.5秒でしたので、乗務員にはなす術がありませんでした。

 コクピットでは状況が分からないまま、次のような会話がなされていたそうです。

 機長「なんだ、今のは!?」

 副操縦士「わからん・・・・・・」

      『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』より引用


 このとき、機体の破片が入って3番エンジンがとまり、4番エンジンにも破片が入って火災が起きていました。フラップの外縁部もダメージを受けていました。コクピットのパイロットたちは状況を把握できておらず、爆弾が爆発したのかと思っていたそうです。

 それでも彼らにはやらなくてはならないことがありました。

 壊れたエンジンを停止し、管制部に連絡し、安全な高度まで降り、機体をどの程度操れるかを確かめ、数々のアラームや警告灯に適切に対応し、機を海に捨てるのか、それともホノルルにに戻るのか判断しなくてはならなかった。彼らは自分たちの本能よりも、チェックリストを信用した。

 機長「チェックリストを使おうか」
 副操縦士「ああ、今開いたところだ。いつでもいける」
 機長「頼む」

        『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』より引用


 このあと、この機は高度を落とし、壊れたエンジンを安全に停止させ、燃料を廃棄して、ホノルル空港にたどりついたそうです。

 9名の犠牲者を出してしまった事故ですが、その後のリカバリーは適切だったと思います。

 もしもみなさんがその機の乗客の一人だったとしたら、と考えてみてください。

 パイロットにチェックリストを使ってほしかったでしょうか?それともパイロットの経験と勘だけで操縦してほしかったでしょうか?

 複雑な業務の緊急時におけるチェックリストの重要性が分かる事件です。  

  


 参考文献:『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』
        アトゥール・ガワンデ(著) 吉田竜(訳) (普遊舎) 
 

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