サンクコストと未来

2012年08月01日

 残暑お見舞い申し上げます。みなさまいかがお過ごしでございましょうか。

 日ごろは大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 昨今、我が国の財政状況の悪化にともない、国家的大型プロジェクトの正否が問われるようになりました。いい加減な予測に基づいてすすめられた事業は、建設が進んでいたとしても改めて検討せねばならないのです。
 無駄な費用が拠出されていることを考えると国民としては大変悲しいことです。

 こういう話のときによく出てくるのが「これまで相当なお金をかけてしまったので、いまさらやめることはできない」という意見です。

 経済学にはサンクコスト(sunk cost:埋没費用)という考え方があります。

 例えば、お買い物ツアーでアウトレットモールに行ったときに、店中をまわってみても買いたいものがないのに、せっかくお金をかけてやって来たのだから、何も買わないと損だ、という考えが脳裏をよぎることがあります。
 その結果、着もしない洋服や履きもしない靴を買ってしまいます。

 モールに行くために費やしたお金は既に支払ってしまったもので、決して戻ってくることはありません。このような費用のことをサンクコストというのです。

 わたしはいくら遠くまでいったとしても、買い物をするかどうかはそれとは完全に切り離して考えるべきだと思います。本当に欲しいと思ったものは買えばいいですが、雰囲気にのまれて不要なものを買うことには意味がありません。

 柳川範之さんのご著書『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』に分かりやすい説明がありました。

 「このプロジェクトに今まで、どれだけ資金と労力をかけてきたと思っているんだ。今さらプロジェクトの中止なんてできるか!」

 などというセリフは、よくビジネスドラマには登場したりします。
 けれども、サンクコストの考え方からすれば、このセリフはおかしいのです。今までにプロジェクトに投入された資金や労力は、プロジェクトを継続しても戻ってくるものではありません。つまり、サンクコストになっていて、既に回収不能です。そうであれば、それを考慮に入れて継続すべきか否かを判断すべきではないのです。
                 
            『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』より引用

 
 柳川さんはこのサンクコストの考え方を人生に投影して次のように述べています。

 過去の思い出が、これからの自分の行動を縛るのは、ばかげています。それは、過去に置いてくることにしましょう。考慮すべきことは、今を生きるために何が大事かということで、それは過去にどれだけ時間を使ったか、お金や労力を使ったかとは関係がないのです。

         『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』より引用


 人はどうしても昔のことに引きずられがちですが、昔のこととこれから行なうこととは、まったく別のことです。
 
 竹中平蔵さんも次のように述べています。

 しかし、私の経験上からいえば、「あなたのサンクコストは自分で考えているほど大きくない」ということをぜひ伝えたいのです。「せっかくよい大学を卒業し、大企業に就職したのだから辞められない」などと考える人は非常に多いのですが、それは客観的に見て大したことない場合が多いものです。

             『竹中式イノベーション仕事術』より引用


 我々が変えることができるのは今この瞬間です。前を向いて生きていきたいですね。
 
 末筆となりましたがみなさまのご多幸を心よりお祈りいたします。

 今月もどうぞよろしくお願いいたします。
 
  


 参考文献:『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』 柳川範之 (日本経済新聞出版社)
 

 『竹中式イノベーション仕事術』 竹中平蔵 (幻冬舎)
 

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