『商店街はなぜ滅びるのか』を読んで

2012年07月20日

 新雅史さんのご著書『商店街はなぜ滅びるのか』を拝読いたしました。

 新さんは1973年生まれ、東京大学人文社会系研究科博士課程(社会学)を単位取得退学され、現在は学習院大学非常勤講師を務めておられます。

 この本は商店街の歴史を胎動期(1920~1945)、安定期(1946~1973)、崩壊期(1974~)の三期に分けて解説するとともに、社会学者の立場から商店街の未来を展望するものです。

 新さんは北九州市の酒屋の長男として育ったそうですが、お店のことはあまり好きではなかったとのことで、その思いが行間から感じられました。
 
 私も商店街のお店の子として育って、いい思いも嫌な思いもしました。お店の子として育ったことが経営者としての考え方に良くも悪くも影響を与えています。
 小さな商店街ですが「大門町商工会」の会長も経験しましたので、商店街に対する考えは少なからずもっております。

 商店街について新さんは次のように考えておられるそうです。

 「商店街」という理念は評価できるが、それを担う主体に問題があったというのが、私の立場である。
 こうした立場を、人によっては、「商店街」という過去の成功事例に対する単なる郷愁や憧憬であると判断するかもしれない。
 しかし、わたしはそれに対しては、次のように反論したい。
 最終章でとくに論じていることであるが、わたしは、過去の共同体を復活させるためではなく、生活保障となるべき地域の拠点として、商店街を定位したいと思っている。

                  『商店街はなぜ滅びるのか』より引用


 新さんによる商店街が滅びた理由をまとめると次のようになります。
 
 1.保守政党と政治的な結託をした商店街が恥知らずの圧力団体になった。

 2.専門店を地域につくるという目的があったが、行政による免許付与は専門性とは関係なく行われた。


 消費向けの高金利の融資か住宅融資などに限られている若者たちへ資金を回すため、次のような提言をされています。
 
 こうしたドロ沼の状況から抜け出すためにも、地域単位で協同組合が商店街の土地を所有し、意欲ある若者に土地を貸し出すとともに、金融面でもバックアップするという仕組みがつくられるべきであろう。

               『商店街はなぜ滅びるのか』より引用


 親が行っていたお店を子どもが継承するという仕組みはますます成り立たなくなっています。人口が減少していくなかでは、従来通りの商売をしていたら淘汰されることは必然であり、その厳しい場面へわざわざ飛び込んでいく若者は少ないからです。
 
 一方、最近は若者が経営する洋服のお店や飲食店が商店街の表通りに出店するようになりました。かつては裏通りにあったお客様のターゲットを絞ったお店です。こういう店ははじめは人を集めても、長続きがなかなか難しいという現実があります。経営の観点が希薄で自分の趣味にあうことを優先してしまうからだと思います。

 若者の起業意欲を商店街の復活にかけるのは誠に結構な仕組みですが、何かもう少し手助けや仕組みが必要のように思います。
 
 商店街に関係している皆さまにはぜひ読んで頂きたい本です。
 
  


 参考文献:『商店街はなぜ滅びるのか』 新雅史 (光文社新書)
 

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