ドラッカーの『明日を支配するもの』第5章より引用します。
仕事を分析したテイラーが発見したものは、ヘシオドス、ウェルギリウスからカール・マルクスにいたる詩人や思索家が口にしていたことに、ことごとく反していた。彼らは技能を神聖視していた。テイラーは、肉体労働にそのようなものはないとことを明らかにした。そこには単純な反復動作があるだけだった。彼ら肉体労働者を生産的な存在にするものは知識だった。未熟練であっても行なえる単純な動作にすることだった。テイラーこそ、仕事に知識を適用した最初の人だった。
『明日を支配するもの』より引用
テイラーとは"The Principles of Scientific Management" 『科学的管理法』で有名なフレデリック・W・テイラーのことです。
それまでの仕事は、本人の気持ちや体調の変化に自由に任せていて、生産性を上げるという概念はなかったのだと思います。「技能を神聖視していた」ということです。
テイラーは仕事を単純な連続した動作に分解し、普通の人であれば同じ時間内に同じ成果を上げられることを明らかにしました。
仕事を神聖視するのではなく、知識をもってして分解したのです。
しかるに、この100年間に、肉体労働者の生産性の向上と実質賃金の上昇をもたらした手法のほとんどすべてが、いかに違いを強調しようとも、彼の手法を基盤としていた。職務拡大、職務充実、多能化のいずれもが、働く者の疲労を防ぎ、生産性を上げるために、彼の手法を使った。
『明日を支配するもの』より引用
ドラッカーのテイラーに対する賛辞はすごいです。
いかにテイラーの手法に限界と欠陥があったにせよ、彼ほど人類の歴史に大きな影響を与えたアメリカ人はいない。ヘンリー・フォードでさえ及ばない。
まさに彼の科学的管理法とその後継たるインダストリアル・エンジニアリングこそ、世界を一変させたアメリカ生まれの知恵である。
『明日を支配するもの』より引用
テイラーというのは労働者を扱き使う人という悪いイメージがありました。私が大学で学んでいた頃にはあまり評価されていなかったように思います。テイラーの批判をする先生がいた記憶があります。時代が古く表現もあまり良くないので無理もありません。
ドラッカーの著作を読んで気がついたことは、テイラーこそ、いま我々が恩恵を受けている大量かつ正確、精密に生産できる仕組みのもとを考え出した人だということです。

参考文献: 『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』
P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)
『新訳 科学的管理法』 フレデリック・W・テイラー(著) 有賀裕子(訳) (ダイヤモンド社)
Hitoshi Yonezu at 10:00
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