2025年03月05日
春というのに大雪の寒い日が続きます。ただいま、高崎付近を新幹線で走行中ですが、10センチくらい雪が積もっています。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第14章 CEOと取締役会」の「ボトルネックはボトルのトップにある」の節です。
この節の冒頭部分の文章をご紹介します。
「ボトルネックはボトルのトップにある」という。いかなる組織といえども、そのトップマネジメントを超えて優れたものとはなりえない。トップを超えて大きな構想をもつことも、卓越した仕事ぶりを示すこともできない。企業は、先代のトップの構想と遺産によって、しばらく生き続けることはできる。しかしそれは後払いで生きているにすぎず、支払いの期日は思っているよりも早く来る。
『現代の経営(上)』 p223より引用
この部分を原文で紹介します。
“THE bottleneck is at the head of the bottle,” goes an old saw, No business is likely to be better than its top management, have broader vision than its top people, or perform better than they do. A business—especially a large one—may coast for a little time on the vision and performance of an earlier top management. But this only defers payment—and usually for a much shorter period than is commonly believed.
ボトルネックとは、業務、システム、交通などで、全体の流れや性能を制限したり阻害したりする要因を指します。瓶の首が細くなっていることをなぞらえた言葉です。
トップマネジメントが、会社の流れや成長を止めてしまう原因になっているということです。
企業はそのトップの器以上に大きくなることはない、と言いますが、このボトルネックの話も同じことを言っています。
No business is likely to be better than its top management, have broader vision than its top people, or perform better than they do.
会社はトップマネジメント以上によくならないのですから、トップマネジメントの器が大きくなれば、会社も成長できるということです。
会社の不具合は、トップマネジメントの責任であり、部下のせいにすることは出来ないのです。
耳の痛い言葉です。
では、トップマネジメントの器が大きくなるとは、具体的にはどういうことでしょうか?
稲盛和夫さんなら、徳を積む、心を高める、人格を高める、ということをおっしゃるでしょう。
ドラッカーには似た概念として「真摯さ」という言葉があります。
この節の後から「CEOの仕事と責任」が説明されますが、そこには真摯さの問題ではなく、具体的にすべき行動が示されています。
しかし、その内容は人格を高めることと間接的につながっている部分がある、と思います。
続きは来月ご紹介します。
いつもご利用ありがとうございます。
今月もどうぞよろしくお願いいたします。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
Hitoshi Yonezu at 09:32
| ドラッカー
2025年02月03日
寒中お見舞い申し上げます。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第13章 組織の文化」の「リーダーシップとは何か」の節です。
ドラッカーは、普通の人に普通ではない力を発揮させることを組織の目的の一つとしてきました。普通の人をすごい人に変える、というような話はありません。この節でようやく、リーダーシップとは何か?という問いかけが出てきました。
以下の文章は、この節より抽出したものです。
リーダーシップに代わるものはない。しかしリーダーシップは、創造できるものではない。昇進によって生み出すことのできるものではない。教えたり学び取ったりすることのできるものではない。
マネジメントにできることは、リーダーの資質を発現しやすくするか、発現しにくくするか、いずれかの環境をつくることだけである。しかもリーダーの資質を備える者はあまりに稀であり、かついつ現れるかを知りえない。
リーダーシップとは姿勢でもある。しかるに、(雇用契約がマネジメントに対し、人の個性を変える権限まで与えているかは別として) 人の姿勢ほど曖昧で変えにくいものはない。したがって、卓越した組織の文化をもたらすための方法としてリーダーシップに依存することは、何もせず、何ももたらさないことを意味する。
リーダーシップとは、人を惹きつける資質ではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。リーダーシップとは、仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものは営業マンシップにすぎない。
リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである。リーダーシップの素地として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認するという組織の文化に優るものはない。
『現代の経営(上)』 p221-222より引用
最後の段落を原書で紹介します。
Leadership is the lifting of a man’s vision to higher sights, the raising of a man’s performance to a higher standard, the building of a man’s personality beyond its normal limitations. Nothing better prepares the ground for such leadership than a spirit of management that confirms in the day-to-day practices of the organization strict principles of conduct and responsibility, high standards of performance, and respect for the individual and his work.
引用した文章を丁寧に読んでいくと、次のようなことではないかと思います。
まず、リーダーシップは、創造することは出来ず、昇進させて生まれるものではなく、学べば身につくものでもない、ということです。
マネジメント(経営者層)にできることは、リーダーの資質を発現しやすくするような環境をつくることです。
リーダーシップは姿勢でもありますが、人の姿勢を変えるのは大変難しく、人の姿勢の変化を待つのは何もしないのと同じことです。
リーダーシップは、人を引き付ける魅力ではなく、人気取りでもありません。(ドラッカーはカリスマも否定しています。)
リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものです。
リーダーシップの資質を備える人を発現させるために、組織として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認することです。
まとめますと、組織内にリーダーシップを発現させて、通常を超える成果を上げられるようにしたいのですが、簡単にできるものはないということです。(リーダーシップは育てることができない。)
ただ、リーダーシップを発現させるために、組織としてできることは、以下のことを日常で確認していくことです。
①行動と責任についての厳格な原則 (組織の目標、自分の目標、発言に忠実に行動する。責任を果たす。)
②高い成果の基準 (自ら高い目標を掲げる。前向きでないと高い基準はつくることができない。)
③人と仕事に対する敬意 (お客さま、同僚、社会に敬意を持つ。コンプライアンスを重視する。誠実である。二面性がない。)
行動しない、成果を上げないのに、批評や文句ばかりをあげつらう人、現状に甘んじている人、他人に敬意を示さない人、他人に厳しく自分に甘い人、・・・などを許す組織風土では、リーダーシップは発現しないということになりましょうか。
いつもご利用ありがとうございます。
今月もどうぞよろしくお願いいたします。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
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Hitoshi Yonezu at 10:00
| ドラッカー
2025年01月01日
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は大変お世話になりました。誠にありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第13章 組織の文化」の「マネジメントの適性」の節です。
この節では、マネジメントの適性が「真摯さ」であることについて詳しく書かれています。
いかなる仕組みをつくろうとも、マネジメントへの昇格人事で日頃いっていることを反映させなければ、優れた組織の文化をつくることはできない。本気であることを示す決定打は、人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。なぜならば、リーダーシップが発揮されるのは、人格においてだからである。多くの人の模範となり、まねされるのも人格においてだからである。
真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、あとで身につけることはできない。真摯さはごまかしがきかない。一緒に働けば、特に部下にはその者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法などほとんどのことは許す。しかし真摯さの欠如だけは許さない。そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない。
真摯さは定義が難しい。しかし、マネジメントの仕事につくことを不適格にするような真摯さの欠如は、定義が難しいということはない。
『現代の経営(上)』 p218より引用
マネジメントの仕事については、定義が難しくないという「真摯さの欠如」について、ドラッカーが提示した事例を以下にまとめます。
①人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならない。人のできることは何も見ず、できないことはすべて正確に知っているという者は組織の文化を損なう。
②「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者を昇進させてはならない。仕事の要求よりも人を問題にすることは堕落である。
③真摯さよりも頭脳を重視する者を昇進させてはならない。そのような者は未熟だからである。
④有能な部下を恐れる者を昇進させてはならない。そのような者は弱いからである。
⑤自らの仕事に高い基準を定めない者も昇進させてはならない。仕事やマネジメントの能力に対する侮りの風潮を招くからである。
『現代の経営(上)』 p219より抜粋して引用 番号を入れました
①何でもできる、すべての分野において強みをもっている、という人はなかなかいません。誰にも強み、弱みはあります。人の弱みに焦点を合わせる者は、人の良いところをほめることができないと思います。弱みや間違いを指摘することは誰でも出来ますが、よいところを見つけて評価するのはなかなか難しいことです。
②誰が正しいか、に関心をもつということは、えこひいきか、ごますりをすることだと思います。会社の外部におられるお客さまのことを忘れて、会社の内部のほうが大切だと考え、内部の対策に走っているわけです。
①と②について、嫌いな人の弱みを強調して排除し、正しいことを言う人よりも自分の好みの人を選んで周りを固める人は、結局、わがままで自己中心的な人だと思います。この人が何に価値に置いているかを見極めたほうがいいですね。(お金、愛人、召使い、地位、・・・)上司がこういう人だったら、すぐに逃げるべきです。
③頭の良さのようなものが大切な部分はありますが、それもよりも真摯さが大切であります。人をまとめたり、全員に実行させたりするのは頭脳だけではできないからです。
④自分を超えようとする部下を恐れるのは、自分に力がないからです。周りの者は心の中で「早く代わって」と思っているかもしれません。
⑤高い基準を持とうとしない者は、今のままでいい思っていて、何もしない人です。会社員にはありがちですが、自分の地位を保ち、自分のいる期間だけは成績を保ちたいということでしょう。
この説の最終部分には次のようにまとめられています。
知識がなく、仕事もたいしたことがなく、判断力や能力が不足していても、害をもたらさないことはある。しかし真摯さに欠ける者は、いかに知識があり、才気があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させる。企業にとって最も価値ある資産たる人材を台無しにする。組織の文化を破壊する。業績を低下させる。
(中略)
したがって、特にトップマネジメントへの昇進においては真摯さを重視すべきである。要するに、部下となる者すべての模範となりうる人格をもつ者だけを昇格させるべきである。
『現代の経営(上)』 p219-220より引用
上記の最後の一文を原書で読んでみます。
In appointing people to top positions, integrity cannot be overemphasized. In fact, no one should be appointed unless management is willing to have his character serve as the model for all his subordinates.
トップを任命するには真摯さが強調される過ぎることはないのです。そして、すべての部下たちの模範になるような人格の人をトップに任命すべきなのです。
ドラッカーの「真摯さ」は、やはり人格に関わるものであると考えてよいでしょう。
仕事は、日々、月々、年々、いろいろな経験をしながら、少しずつでも人格を上げていくところだと思っています。
新年を迎えて、あらためて日々反省をしながら生きていきたいと思っています。
いつもご利用ありがとうございます。
新年がみなさまにとりまして、ますます幸せな年となりますことを心より祈念しております。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
"The Practice of Management" Peter.F.Drucker HarperCollins e-books
https://www.amazon.co.jp/dp/B003F1WM8E/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
Hitoshi Yonezu at 10:00
| ドラッカー
2024年12月08日
今年もいよいよ押しつまり、みなさまにおかれましては、お忙しくお過ごしのことと存じます。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第13章 組織の文化」の「マネジメントの理念」の節からご紹介します。
コンチネンタル製缶の制度が最もよくできている。同社では経営管理者が、自分や自分の仕事に影響のある重大な決定については、社長や取締役会長に直接訴えることができる。もちろん実際に社長や会長という、いわば最高裁にまで話が行くことはほとんどない。すべてではないにしても、ほとんどの訴えは、はるか下の最初の事情聴取の段階で片づく。 しかし、トップマネジメントに訴える権利があるということは、マネジメント全体に対し強い影響を与えている。決定を行う経営管理者は慎重に検討せざるをえない。 重大な決定をされる部下のほうも、偏見やばかげた判断の犠牲にならずにすむようになっていると感じている。
だが、それらの防止策よりも、マネジメントが正しい組織の文化を確保しようとしていることを示す行動をとるほうが、はるかに重要である。そのための簡単な方法は、すべての経営管理者に対し、次のようなメッセージを伝えるような行動をとることである。
「組織の文化は組織全体の問題である。自らが率いる部門において、優れた組織の文化をつくるために何をしているかを考えてほしい。また、自らが属している上位の部門において優れた組織の文化を生むために、上位の部門全体のマネジメントが何ができるかを教えてほしい」
このように、一人ひとりの経営管理者とその上司の行動について、常時点検させることが効果をもたらす。組織の文化を向上させるうえで大きな役割を果たす。トップマネジメントが口先でなく本気であることを知らせる。組織の文化への意欲を生み出す。
『現代の経営(上)』 p217-218より引用
メッセージ(太字)の部分、原書では次のように書かれています。
“The spirit of this organization is the business of every one of us. Find out what you are doing to build the right spirit in the unit you head and tell us, in higher management, what we can do to build the right spirit in the unit of which you are a part.”
ちなみにこの節の名称は、日本語では「マネジメントの理念」となっていますが、原書では"The Management Charter"(経営憲章)です。企業がどのような経営を行うのかを明らかにする文書の意味です。
経営理念をはじめとして、大切なことは、いくら伝えても、伝えすぎたということはありませんし、むしろ、何度繰り返しても、なかなか伝わりません。
経営理念を実行するためにどんなことをしていますか?また、そのために上位の者は何をしたらよいですか?という質問を常に問いかけておく必要があるわけです。
言わないでいると、経営理念と全く違うことが平然と行われてしまうことがあります。
もっともっと言っていかないと、伝わらないです。私ももっとがんばります。
いつもご利用ありがとうございます。
みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。新年がみなさまにとりまして、ますます幸せな年となりますことを心より祈念いたします。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
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Hitoshi Yonezu at 13:47
| ドラッカー
2024年11月18日
思い出す限り、もっとも暖かった秋が終わり、ようやく冬が近づいてきたと感じています。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。
このブログでは、ドラッカーの『現代の経営(上)』を読んでおります。
今回は「第13章 組織の文化」の「報奨と動機づけとしての報酬」の節からご紹介します。
報奨は仕事の目標と直接結びつける必要があり、短期的な利益と結びつけるのは、マネジャーに対する方向付けとしてよろしくない、というのがドラッカーの考えです。
能力を十分生かせなくなったために会社を移りたがっている役員がいる。何度も転職の誘いがあったが、いつも最後には、あと五年いれば功労金の付加分が増えるという理由で断ってきた。その人はいまもその会社にいる。相変わらず悩み、いらだち、苦い思いをしている。そしてマネジメント全体に不協和音と不満の空気をもたらしている。
忠誠心を買うことはできない。忠誠心は獲得すべきものである。金の力で引き留めようとすれば、引き留められた者が誘惑に対する自らの弱さを会社のせいにするだけである。
『現代の経営(上)』 p211より引用
一般的に、給料が高ければ、それだけでも退職を防いだり、先延ばしさせたりすることは出来ます。
しかし、高い給料は、その従業員の会社に対する忠誠心を高めることや、会社をもっとよくしよう、成果を上げようという気持ちにさせることにはつながらないのです。
このことをドラッカーは「忠誠心を買うことはできない」と言っています。
コンプライアンスを重視することは絶対ですので、賃金規定などを作成すると、ルールによって昇給が決まります。
中小企業であっても、社長の自由な意思で報酬を決めることはできずらくなります。
状況によっては、仕事をしないマネジャーが高い地位にしがみついて、部下の昇進を抑えようとし、力のある部下が能力を充分に発揮できなくなります。
週ごとに刻々と状況が変わっていく動きの激しいいま、社長の裁量や決断を自由に迅速に行う必要性を感じます。
いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

参考文献:
『現代の経営[上]』 P.F.ドラッカー (ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0081M7YFS/ref=nosim?tag=shachouinshin-22
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Hitoshi Yonezu at 09:56
| ドラッカー