『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』を読んで
嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』を拝読しました。
題名からすると統計・確率のことばかりが書いてあるの本なのだろうか?と思ってしまいます。
確かに前半は統計・確率の論理の話ですが、後半は東電の原発問題と復興政策(財政問題、経済政策)について筆者の見解がまとめられています。
高橋さんは元大蔵官僚で、特別会計の「埋蔵金」を暴露した人として有名ですが、東大理学部数学科と経済学部経済学科の両方を卒業されておられます。
もともと数学的な素地があるのでこのような確率・統計の本が書けるのですね。
大学ではベイズ確率(主観確率)を学んでおられたそうです。ベイズという人が考えたのでこの名前がついています。
主観確率とは「特定の事象が起こる確率は○○%」ではなく、「特定の事象がおこる確率は○○%だと思う」という人間の心理のなかにあるものを確率としてとらえる考え方のことです。
多くの統計データを集めなくてもよいですし、また、事象が起こる環境が変化しても適用できるところが特徴です。
私も学生時代ベイズ確率を学んだことがありましたが、この本を読むまですっかり忘れていました。
後半部分は震災の復興に対する高橋さんの論調が光ります。
高橋さんは東日本大震災後の復興について、重要なことは同じものを同じ場所につくらないことだと述べています。例えば津波で被災された地域は、安全な場所に新しい街をつくった方がいいということです。ところが、今の法律では同じものを同じ場所につくることになりかねないのだそうです。
なぜなら、「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(災害負担法)」という法律で、地震により被災した地方公共団体のインフラについて、原状に復旧する場合にのみ国が資金を出すと定められているのです。この枠があるため、基本的には震災以前と同じようなインフラをつくることになりかねません。
この点からいえば、インフラについては財源論からスタートするのではなく、災害負担法の枠を政治家が取り払うことが肝要です。
『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』より引用
私は復興政策の進捗について詳しく見ていないのですが、この問題はまだ解決されていないのでしょうか。
大変な被害に見舞われた被災地の当事者の皆さま方にはいろいろなご意見があることでしょう。こういうときのための国家です。先の先まで見据えて、今までよりももっとよい街をつくって頂きたいと思います。
新しい街のデザインが過去の因習に縛られることなく、理想的なものになることを祈っています。
この他日銀や東電に対する考え方も興味を引きます。(日銀に対しては高橋さんは昔から厳しいです。)どうぞご参考になさってください。
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参考:『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』 高橋洋一 (光文社新書)
参考ブログ:『日本経済のウソ』を読んで
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e638561.html
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