落合監督の『采配』を読んで

Hitoshi Yonezu

2011年12月31日 10:00

 愛想を振りまくこともなく、付き合いも好まず、コメントさえ出さず、どんなに批判を浴びても我が道を一人歩いていく、孤高の人、落合博満前中日ドラゴンズ監督。

 ふてぶてしいとさえいえるようなその態度は現役時代も監督になっても変わりませんでした。

 2004年からの8年間の監督時代、ドラゴンズを4度のリーグ優勝と53年ぶりの日本一に導き、すべての年でAクラス入りをしました。

 こんなにすごい成績を残しているのに、契約終了という理由で、今期をもってドラゴンズ監督をおりることになりました。

 ファンやスポンサーに対してあまりにもサービスをしないために上層部から圧力がかかった、という噂も聞きます。

 落合監督のご著書『采配』を拝読いたしました。

 プロ野球における采配や選手の育て方の持論を素直に淡々と述べた本です。読者にビジネスパーソンを想定しているようで、野球の話をいちいちビジネスの話と結び付けているのは善し悪しと思います。

 読み終わって感じたことは、あのイメージの悪いふてぶてしさにはすべて意味があって、実はいろいろなことを考えている人であるということです。むしろ、やさしさや温かさを感じてしまったくらいです。

 2009年のワールドベースボールクラシックの監督要請を断り、原監督が日本代表監督に就任すると、ドラゴンズの選手が全員代表入りを辞退したという事件がありました。

 この問題を外から眺めていると、落合監督の我がままのように思えてしまいます。

 しかし、この本を読む限り、好き嫌いで行ったことではなく、球団と契約している一個人事業主にすぎない選手たちの選手生命を守るという理由があったことが分かります。

 WBCに出場することは選手たちにとって体力的にも精神的にも大きな負担となるそうです。

 ここには、WBCファンの熱狂よりも、選手たちの人生を大切にする落合監督がいます。

 プロ野球の監督というのは日本にたった12人しかいません。なりたくてもなれない職業の一つだと思います。
 
 私のような凡人と比べて、落合監督の思考回路は随分変わっています。だからこそここまで成功しているのでしょう。

 当たり前のことも結構書いてありますが、落合監督が述べているから読む価値があります。ぜひご参考になさってください。

 
 
 参考文献:『采配』 落合博満 (ダイヤモンド社)
 

関連記事