竹中平蔵著『経済古典は役に立つ』を読んで

Hitoshi Yonezu

2011年11月17日 10:00

 慶応義塾大学教授の竹中平蔵さんといえば、小泉内閣で閣僚として構造改革を主導し大活躍された方です。知らない人はいないですよね。

 竹中さんのご著書『経済古典は役に立つ』を読みました。2010年11月20日に光文社新書として発行されたものです。

 かねがね竹中さんの話は分かりやすいし、本も読みやすいと感じておりましたが、この『経済古典は役に立つ』は、よくもこんなに難しい課題を分かりやすくまとめたものだ、と感嘆せざるをえません。

 アダム・スミス、マルサス、リカード、マルクス、ケインズ、シュムペーター、ハイエク、フリードマンなどの経済学者が、当時何を考えてどういう政策をとっていたのか、現在にどう通じるのか、それぞれの著作を照らし合わせながら読み説いていく内容です。
 
 私は本を評価するような立場にはありませんが、大学生は難しい教科書を読むよりはまずこの本を読んだ方が経済学説や学説史を俯瞰できるのではないか、と思います。

 私はいままで経済学説はあまり学んだことがなかったので、この本ですっきりしたような気になれました。 

 竹中さんによれば、世界大恐慌以降、世界各国でケインズ政策をとっている国はほとんどなく、唯一日本だけといってもよいのだそうです。

 その理由は、ケインズ政策には政府が失敗する恐れがあること、不況のときの財政出動は簡単ですが、好景気のときに財政をひっこめるのは大変だということ、開放経済では財政政策の効果が低いこと(マンデル・フレミング効果)の三点だそうです。

 また、ブキャナンの公共選択論に立つと、選ばれた政治家は何らかの便益を選挙民にもたらすために税金を使うことを楽しむのだ、といいます。ケインズの世界では賢人が公共心にもとづいて行動するのが前提ですが、現実は自らの利己心にもとづいて行動していると考える必要があるそうです。

 この辺りはいままでの日本の政治経済を適確に説明していて興味深いところです。

 経済学を学んだことのある方や、経済学に興味のある方はこの本で論理を整理するのがよいと思います。

 良書です。どうぞご参考になさってください。

 

 参考文献:『経済古典は役に立つ』 竹中平蔵 (光文社新書)
 

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