下坐行とは

Hitoshi Yonezu

2011年09月09日 10:00

 森信三さんは、『修身教授録』の中の「下坐行」という講義で次のように述べています。

 さて下坐行とは、先にも申すように、自分を人よりも一段と低い位置に身を置くことです。言い換えれば、その人の真の値打ちよりも、二、三段下がった位置に身を置いて、しかもそれが「行」と言われる以上、いわゆる落伍者というのではなくて、その地位に安んじて、わが身の修養に励むことを言うのです。そしてそれによって、自分の傲慢心が打ち砕かれるわけです。すなわち、身はその人の実力以下の地位にありながら、これに対して不平不満の色を人に示さず、真面目にその仕事に精励する態度を言うわけです。

                   森信三 『修身教授録』より引用


 ささや株式会社の経営理念の三番目は、「私たちは、仕事を通じて、自らを変革し、人格を高めます。」というものです。

 先日、社内会議の際、T部長がスタッフに対して、

 「仕事を通じて人格を高めるためには、どのように仕事をしたらいいですか?」

 という問いを投げかけました。

 一人一人の答えを聞いてみると、

 「与えられた仕事をまじめにしっかりやる」
 
 「今日この瞬間を一生懸命生きる」

 という内容の答えがほとんどでした。

 私はそれはそのとおりで、大変立派なことだと思いました。

 同時に、冒頭に引用いたしました森信三さんの「下坐行」のことを思い出しておりました。

 森信三さんによれば、下坐行とは、自分よりもずっと下の位置で働きながら、それを不平とせず、逆に自分を鍛える機会と考える生活態度のことをいうのだそうです。

 日々の仕事にしっかり取り組むことは、人格の形成につながりますが、さらにもう一歩進めて、下坐行の精神で仕事を行なうことは人格をもっと鍛えることになるのではないか、と思ったのです。

 下坐行をくだいて考えれば、人の嫌がることを自ら喜んで行うこと、利害関係のない人や公共のためになることを人知れず行なうことなども該当するでしょう。

 うちの社員の中には、自分の仕事でいっぱいでそのレベルにまで至っていない、という人も多いでしょう。出来るところから実践してほしいことです。 

 

 参考文献:『修身教授録』 森信三 (致知出版社)
 

関連記事