気品を高めるには
森信三さんは、『修身教授録』の中の「気品」という講義で次のように述べています。
ただ今も申すように、いかなる修養もそれが修養である以上、いずれもその人の気品を高める上に、役立たないものはないわけですが、しかし先ほど来申して来たように、気品というものが、いわばその人の背後から射してくる人格的な光背のようなものとすれば、気品を高める工夫は人格の最奥所、すなわち何人も容易に窺い得ない心の奥底の曇りを拭って、その乱れを防ぐということではないかと思うのです。ですから、外側に現れた形の上からは、ほとんど同一と見える行においても、それをする人の心の曇りのいかんによって、気品という上からは、そこに大きなひらきを生じてくるわけです。
森信三 『修身教授録』より引用
森さんは気品を高める修養のうち、心の奥底の曇りを拭うこと、すなわち内心のけがれをのぞくことが最も根本的なものであるとし、それを「慎独」、独りを慎むことだといいます。
「慎独」とは最近ではあまり聞きなれない言葉です。
広辞苑によると、「自分ひとりで、他人のいないところでも、身を慎むこと。また、常に自己の心中に注意して雑念の起こらないようにすること。」という意味です。漢文から来ている言葉のようです。
気品のある人は、独りを慎んでいる・・・このことを森信三さんは見抜いていたのです。
誰も見ていないところで慎んで行動する・・・この慎独こそは、日本人の誇るべき行動だったのではないでしょうか。
最近では、見えないところでごみを捨てたり、ネット上でひどい書き込みをしたり、慎独とはかけ離れた行動も当たり前のように行われています。
われわれ一人一人の行動にかかっていることです。よく考えたいことです。
参考文献:『修身教授録』 森信三 (致知出版社)
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