『疲れすぎて眠れぬ夜のために』を読んで

Hitoshi Yonezu

2011年05月29日 10:00

 神戸女学院大学名誉教授で、エッセイストの内田樹さんの『疲れすぎて眠れぬ夜のために』を読みました。

 内田さんは、政治や社会、教育など、さまざまなことについて論評されている有名な方ですが、内田さんの本を読むのは初めてでした。

 この本は語り下ろしという形で書かれたもので、2003年に単行本として刊行されたあと、2007年に文庫化され、2010年には文庫本で十刷まで発行されています。

 『疲れすぎて眠れぬ夜のために』という題名だけをみると、よく眠れるような安らげる本なのか、あるいはもっと眠れなくなるような怖い本なのか、と思ってしまいますが、内容は内田さんの考える人生論、幸福論です。どんな内容なのだろうと想像しながら読みはじめましたが、題名と内容はあまり関係がないように思えます。

 論理的な話ですのでさらさらとは読めませんが、そんなに難しくはないです。新しい見方、考え方を知ることができましたし、納得できるところがたくさんあり、面白く読める本です。

 紹介したいところはたくさんあるので迷います。『疲れすぎて眠れぬ夜のために』の「家族を愛するとは」の章より引用します。

 ・・・自立できる人間、孤独に耐えられる人間しか、温かい家庭、親しみのあふれる家庭を構築することができないと思っているからです。一人でいることのできる人間だけが、他者がかたわらにあるときの温もりに、深い感謝と敬意を抱くことができるのです。
 逆説的なことですが、「温かい家庭を構成できる人間」とは、「一人でいることに耐えられる人間」のことです。「自分のために家族は何をしてくれるのか」ではなく、「家族のために自分は何をしてあげられるのか」ということを優先的に配慮するような人間のことです。

                     内田樹著『疲れすぎて眠れぬ夜のために』より引用



 内田さんは、家庭は社会であり、家族は他者であるという考え方です。これは小林正観さんの考え方にも通ずるところですが、一般的にはなかなか理解してもらえないところです。

 各論については賛否あると思いますが、内田さんの本は一度は読んだ方がよいです。私ももっと早く読んでいればよかったと思いました。
 
 

 参考ブログ:
 「家族も人生の5%程度」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e325198.html
 「97%は自分の生き方」
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e540722.html

 参考文献:『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 内田樹 (角川文庫)
 

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