『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』を読んで
中国でコラムニスト、テレビコメンテーターとして活躍する加藤嘉一さんが著した、ディスカヴァー携書の『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』。
加藤嘉一さんは、1984年、静岡県の生まれで、国内の高校を卒業後、国費留学生として北京大学に留学されました。
同大学大学院修士課程を修了し、現在は英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニスト、北京大学研究員、中国中央電視台ならびに香港フェニックステレビのコメンテーターを務めておられます。
2008年3月に中国でブログを開設したところ、3カ月で500万アクセスを突破し、その後2500万アクセスまで到達、いま「中国で最も有名な日本人」と言われているそうです。
中国での激しい抗日運動、反日感情を見聞きする度に、私の気持ちは重くなります。中国人がそのような行動をとる理由は分かっていますし、国民の気持ちはそんなに簡単に癒えない、ということも理解します。
でも、私の知っている中国人は日本のことが好きで、日本のことを分かってくれている人ばかりだ・・・と思っています。中国人は、本当は日本人のことをどう思っているのだろうか・・・
題名に強く引かれたので読んでみました。
この本の内容を一言でまとめると、「北京から見た日中関係についての雑感」でした。
題名から期待した内容とは全く違うものでした。題名の付け方がうまいというか、おかしいというか。
日本にも中国にも距離をとって書かれている感じで、欧米の人が外から見て書いたような文章です。こういう文章になってしまったのは、中国で出版された本を加筆修正し、邦訳したからという理由もあるのではないかと推測します。
この本のよいところは、中国に長く住んでいる人しか知りえない生の情報を得ることができることです。
加藤さんは、中国人の思考パターンについて、次のように書かれています。
「公共の場は、社会のメンバー全員が共有するもの。みな平等に空間を享受する。だから、公共の場でどんな行動をしても、問題にはならない。」
中国人は世の中を弱肉強食、ゼロサムの舞台だとみなしており、公共の空間での行為については、全く遠慮しないのだそうです。
先般、中国へ視察旅行に行った際、帰りの広州発成田行きのJAL機で中国人の観光客のグループと乗り合わせました。
ボーイング767がボーディングブリッジから切り離され、トーイングトラクターによってプッシュバックされているときです。
「ニイハオ!○△□×◆?!○△□×◆!?○△□×◆・・・」
大声で携帯電話をかけ始める中国人の女性。
当然ですが、機内は携帯電話禁止です。
JALのCAが電話を止めるよう注意に来ます。
「だめですよ!電話は切ってくださいね。携帯電話!電話・・・だめね。」
電話を指さして注意します。JALのCAは中国語ができません、中国人は日本語も英語もできません、したがって、CAは日本語で言うしかないのですね。
中国人は電話を切って、かばんにしまったのですが、なんだか不思議な光景でした。
その後もフライト中、中国人は大騒ぎです。
でもCAは、慣れているようで、全く動じないのです。ドリンクや食事を聞くにも
「オレンジジュース?トマトジュース?」
「ライチジュースはないの!」
「鶏肉?牛肉?どっちがいいの?」
まるで子供に聞いているかのように、やさしくも強い日本語で問いかけていました。おそらく中国人の方は言葉の意味を全然理解していなかったと思います。でも、指示に従っていました。
30代後半くらいのCAだったでしょうか。私は、彼女が中国人に媚びることなく、日本語だけを使って、堂々と場を治めていたことに、いたく感動しました。本当は拍手したかったくらいです。
話がそれました。
加藤さんはこの本の「おわりに」で、日本のタクシーで財布を忘れたところ、誰にも盗まれることなく財布が戻ってきたということについて、中国ではありえないことだと言いつつ、
日本もまだまだ捨てたもんじゃないな、とぼくに気づかせてくれた出来事だった。
と書かれていました。
日本が捨てたもんだなんて一度も思ったこともない日本人の私としては、加藤さんは日本のことをそんな風に考えているのか、と少々腹が立ちました。
まだ若い著者ですので、今後に期待したいと思います。
参考文献:『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』 加藤嘉一 (ディスカヴァー携書)
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