『辺境から中心へ』を読んで

Hitoshi Yonezu

2011年04月26日 10:00

 かつて大蔵省国際金融局長や財務官を務め、その為替加入政策をして、マスコミやディーラーの間で、ミスター円と呼ばれるようになった榊原英資さん。慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、いまは青山学院大学教授をなさっています。

 榊原英資さんの近著『辺境から中心へ 日本化する世界』を長野駅前の平安堂書店で見つけ、読んでみました。

 辺境であるがゆえに外国からの侵略もなく、独自の文化を育てることができた日本は、今後、高い成長は望めないものの、成熟した国として世界に影響を与える国になると称賛しています。

 今まで榊原さんのご著書は、金融、経済、教育などが話題の中心でしたが、この本では四季の移り変わりや、魚、野菜などの食文化、文学などにも多くのページを割いており、いままでの榊原さんの本とはやや趣向が違うと思います。
 特に、鰹、鰤、鱧、鮎など、日本の魚については詳しく解説されていて、かなりお魚がお好きなのだなという感じを受けました。

 日本が世界の中心になれるという根拠は、恵まれた気候条件、美しい自然、多様で品質の高い食材、安全な都市、親和性の強い文化、教育水準、表と裏を同時に大切にするデュアルスタンダード・・・など、日本は何をとっても不足のない環境ですので、成長ではなく成熟ということを考えるなら、日本は中心になるだろう、ということだそうです。
 このあたりの論理は、榊原さんの想いが強すぎて、やや説得力に欠けるような気もしますが、私はよい国に住んでいるんだなあということがよく分かり、自信がもてました。
 
 成長を求める製造業がアジアに出ていく傾向は加速するでしょうが、国内は医療、介護、教育、観光などのサービス業で大幅な規制緩和をして、成長産業に育てるべきだといいます。

 また、リーマンショック後のアメリカ経済については、個人部門のバランスシートがいまだ改善されていないために、この先、消費は三~四年間は停滞するとし、アメリカ経済の終焉までを含め、悲観的な見方をされています。

 日本はさらに成熟した国になり、世界経済の中心がアメリカからアジアへ移っていく、という大きな流れには、私も納得いたします。
 
 『「日本化」する世界』という副題を見て、これを読んだら元気になれるかも、と思って読み始めた本です。
 
 日本には、よいところがたくさんあるんだ、とよく理解できます。みなさまもぜひご一読ください。

 
 
 参考ブログ:
 『間違いだらけの経済政策』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e641855.html

 『「日本脳」改造講座』を読んで
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e628184.html
 
 参考文献:『辺境から中心へ』 榊原英資 (東洋経済新報社)
 


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