『日本人へ リーダー篇』を読んで
『ローマ人の物語』など、イタリアを中心とした歴史小説で有名な塩野七生さんが、月刊『文藝春秋』に掲載していた文章をまとめたものが『日本人へ リーダー篇』です。
塩野さんのイタリアに対する深い造詣をもとに、歴史とその時代を重ね合わせながら、日本や世界の政治を論評されています。
この新書にまとめられているのは、2003年6月から2006年9月までの期間ですから、日本では、小泉政権の期間にあたります。
今頃になってなぜ数年も前のエッセイを読むのか・・・と思われるでしょうが、後から読むと、その方の論評が大局をつかんでいたのかどうかわかるので、面白く読むことができるのです。
実際に読み進めると、やや感情的に書かれているように思える部分もあるのですが、大局をみている部分は、今になってからも活き活きとしているのです。歴史を知っているということは一つの大きな力だと思います。
男神アポロンは、将来を予見する能力を贈り物にすることによって、恋する王女、カッサンドラに迫りましたが、断られてしまいます。
怒ったアポロンは、贈り物を取り返すことはしませんでしたが、カッサンドラがいかに将来を予見し警告を発しようと、人々からは聞き入れらず、信じてもらえない、という条件を付け加えてしまいました。
以後、ヨーロッパでは、現状の問題を指摘し、対策の必要性を訴えながらも為政者からは無視されてきた人を、カッサンドラと呼んでいるのだそうです。
塩野さんは、政府や省庁が活用している審議会について、そこに出席している人たちは、よくわかっているはずの有識者であるのに、なぜ本質論を展開していかないのか、と指摘しています。
審議会でも委員会でも、この種の会議の招かれるほどの有識者ならば、「カッサンドラ」になる覚悟でもって臨むのが本筋ではないかと思っている。
『日本人へ リーダー篇』より引用
いま、さらに悪化している日本の国の状況をみるにつけ、日本はカッサンドラを無視し続けてきたことがよくわかります。
塩野さんは、カッサンドラが自分の意見を通していくには、権力をもつしかないといっています。その格好の例として、当時、国会議員になった竹中平蔵さんを取り上げています。
いまでも、カッサンドラのような人は、つぶされてしまいます。本当のことを言っても、カッサンドラで終わってしまっては何もできないですね。
よいことでも、悪いことでも、本当のことを知りたいし、よくなることをしてほしい、という国民が大多数だと思いますが・・・
参考文献:『日本人へ リーダー篇』 塩野七生 (文春新書)
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