『日本経済のウソ』を読んで

Hitoshi Yonezu

2011年01月05日 10:00

 高橋洋一さんは元財務官僚で、現在は、株式会社政策工房の代表取締役会長、嘉悦大学教授を務める経済学者です。

 小泉政権下では竹中平蔵総務大臣補佐官として活躍されていました。
 増税する前に、政府の出費を減らすことを主張する上げ潮派の論客としても有名です。特別会計の「埋蔵金」を暴露したり、その他、話題の多い方です。

 その著書『日本経済のウソ』は、定説となっている現在の経済政策について、高橋さんの立場からその間違いに切り込んでいくものです。
 経済や政策決定の過程に関する興味深い情報や裏話が満載で、何を紹介しようか・・・と迷ってしまうほどです。

 高橋さんの批評は非常に厳しいものです。

 例えば、日本銀行の独立性についてです。
 日銀は1998年に新しい日銀法ができるまで、独立性が全くなかったそうです。それがこの法律により、民主主義国ではありえないほどの史上最高レベルの独立性を手に入れたのだそうです。

 私も、この法律ができる前後、日銀の独立性を高めるという論争がなされていたことを思い出します。日銀の独立性が高まるのはよいことなのだろう・・・と思っていました。

 高橋さんによれば、中央銀行の独立性とは、「目標の独立性」ではなく「手段の独立性」というのが当時から世界の常識だったそうです。
 中央銀行の目標は、政府または政府と中央銀行が共同して設定するのですが、その後その目標をどのように達成するかについては、中央銀行に委ねられるべきことだそうです。
 日本銀行は、新日銀法により、「手段の独立性」とともに「目標の独立性」までを手に入れてしまったのです。
 
 高橋さんは我が国のデフレの原因は、日銀の金融政策にあるとし、強力な量的緩和策をとることを提案されていますが、この十年の我が国のデフレ状態を考えると、日銀は「デフレ・ターゲット」を設定してきたのではないか?と皮肉っています。

 このほかにも、国家の財政破綻や、郵政民営化の問題など、高橋さんの論理が興味深いです。

 経済学の基礎知識がないと読めない難しい部分もありますが、ビジネスパーソンや経営者の方は、政党や他の論客の説と比べる意味でも、読んでおいたほうがよい本です。ぜひご参考になさっていただきたいと思います。
 
 参考文献:『日本経済のウソ』 高橋洋一 (ちくま新書)
 

 

 
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