日本人の詩心

Hitoshi Yonezu

2010年10月17日 10:33

 『詩心 永遠なるものへ』は、日本の古典文学者で万葉集の研究家である元京都市立芸術大学学長の中西進さんが、万葉集から現代までの短歌、俳句、詩などをとり上げて、解説してくださる本です。

 
大野路は、繁道森道(しげちもりみち) 繁くとも 君し通はば 道は広けむ 

                    越中国(こしのみちなかのくに)の歌

 
 この歌は、越中の国(いまの富山県)の民謡だそうです。
 恋する少女が、歩きにくい大野の森の中の道を通ってくる男に対して、「あなたがかよってくるなら、きっと大野路は広びろとした大道になるでしょう」と、おまじないのように歌っているのです。

 百年経っても、千年経っても、このような人間の情は変わるものではありませんね。

 いまどこかの少女が同じような歌を読んだとしても、違和感はありません。

 人は理ではなく、情で動くのだといいます。情はとぎれることなく、脈々と続いていきます。

 昔の歌を読んで、詩心を感じることができると、日本に生まれた喜びを感じます。

 

 参考文献:『詩心 永遠なるものへ』 中西進 (中公新書) 
 

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