『人生という名の手紙』を読んで

Hitoshi Yonezu

2010年05月31日 10:00

 「世界は、やさしさと思いやりに欠けているように感じられます。わたしの目には、世界は憎しみと批判と敵対心に満ちているように見えるのです。『生産的』な人たちのほとんどは、一生懸命に働き、請求書を払い、時には慈善事業に寄付をし、家に帰って、リアリティ番組を観るのでしょう。ところで、この会場にいる人のうち、毎日、他の人生に喜びをもたらしている人は何人いらっしゃいますか?」
                        『人生という名の手紙』より引用


 『人生という名の手紙』は、30代で交通事故のために四肢麻痺となった精神分析医のダニエル・ゴットリーブが、自閉症の症状をもつ孫息子に向かって、手紙という形式で、どうやって生きるべきか、を語りかけたものです。

 大変な経験をされた著者だけに、普通に生きていたのでは得ることができないであろう深い洞察力で人生をみつめています。
 
 冒頭に引用した文章は、障がいをもつ方は生産的かという質問をした人に、著者が腹を立てて答えたものです。

 著者は四肢麻痺という状況で、精神分析医として患者を診察したり、コラムを書いたり、ラジオに出演したりしています。

 毎日少しでも誰かの幸福に役立ったと感じることができるならば、生き生きとして一日を終えることができるといいます。
 
 誰かと楽しい時間を過ごしたり、誰かの考え方をちょっとでも変えることができたり、思いやりを示したりすることが出来たとき、「生産的」になれるのです。

 人生においては、売上を上げて、支払いをすることだけが、「生産的」だという訳ではないのです。日々ビジネスに流されている私には、本当に申し訳ないと反省する話でした。
 
 参考文献:
 『人生という名の手紙』 ダニエル・ゴットリーブ著 児玉清監修(講談社)
 

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