アメリカはどうなってしまったのか。

Hitoshi Yonezu

2010年05月28日 10:00

 自由と効率化によって、何でもビジネスにしてしまう国、アメリカ。

 かつてはあこがれの対象だった国が、いまでは、魑魅魍魎の住む恐ろしい国になりつつある。


 『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』によれば、全米の大学生の3分の2が借り入れている学資ローンの総額は900億ドル(およそ8.1兆円)だ。

 ニューヨーク州立大学では、学生たちは奨学金やローンなど何らかの形で学費を借りており、その平均額は4年制大学で2万ドル(1ドル=90円とすれば、約180万円)だという。

 90年代以降、世帯収入が上がらない一方で、学費だけは上昇を続けた。アメリカの公立大学の学費は1995年からの10年間で59%上昇したそうだ。

 また、世界屈指の名門大学群であるアイビーリーグや、アイビープラスと呼ばれる研究大学群は、学費と寮費だけで年間7万ドル(約630万円)以上かかる。

 こうした大学の入学願書には両親の年収を書く欄があり、家柄や経済力も合否判断の対象としてなっているため、一般家庭出身の学生が入学するのはほぼ不可能と言われている。
 ペンシルベニア大学などでは、中流以下の家庭出身の学生の割合は10%以下だそうだ。

 では、一般の学生が入学する公立大学はどうなのか。
 一般家庭出身の学生は学費支払いのために学資ローンを借りなくてはならず、アメリカにおいては学資ローンは住宅ローンと並ぶ巨大なマーケットになっている。

 もともと延滞のきかない学資ローンは、一月でも延滞すれば利子が膨れ上がる恐ろしい仕組みを持っている。学資ローンには一切の免除が適用されず、延滞期間が九カ月になると、自動的に債務不履行とみなされ、回収のための法的手続きがとられる。

 そのために、卒業してから破産してしまう学生も少なくないそうだ。

 効率と自由を野放しにしすぎてはいないか。このままでは格差が固定するばかりだ。
 事実上、富裕層と貧困層がますます分離され、富裕層は、だからというわけではないだろうが、積極的に慈善活動をする。貧困層の人たちは永遠に抜け出せない。そういう構図が見え隠れする。

 この本には、他にも医療保険の問題や刑務所における囚人の労働問題などが取り上げられていて、アメリカの問題がよくわかる。

 ぜひご参考になさってください。
 
 参考文献:『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』 堤未果 (岩波新書)
 

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