中国はゴールドラッシュか?

Hitoshi Yonezu

2010年04月26日 10:00

 中国は近いし、昔から交流があるのに、いまだによくわからない国、という印象があるのではないだろうか。

 『中国ゴールドラッシュを狙え』は、中国の定点観測を続けてきた財部誠一さんが、新聞やテレビでは分からない生の中国の姿を教えてくれるものである。

 この本を読む限り、中国という国は非常にしたたかで、大きな戦略と、強い政策推進力をもっている。政治や人権などの問題はあるものの、それはそれとして、経済は確実に伸びていくように感じられる。
 
 我が国も、中国が怖い、分からない、と距離をおくのではなく、共に発展できるように良い関係をつくっていくことが必要だろう。

 国民性の違いなどもよく指摘されることだが、この本に紹介されている成都イトーヨーカドーは、中国人スタッフと強い信頼関係を築き、日本式の経営を取り入れて、素晴らしい業績をあげているそうだ。

 日本人と中国人の考え方が全く違うということがよくわかるエピソードがのっていた。

 昨年の人事で、ナンバー3の管理本部長に昇進されたKさんという女性は、一階のフロアー責任者だったとき、エレベーターの故障によって、お客さまが大混乱してしまったことがあった。
 そのとき、当時の日本人総経理から、対応が遅いと怒鳴られたが、自分はエレベーター係ではないのに、なぜ怒られるか理解できなかったという。

 また、会社が重大な時期に、米国に留学する娘の見送りのために休暇届けを提出したところ、上司に却下された。そのことにキレてしまって、いったんはイトーヨーカドーを退職してしまったのだそうだ。

 これらのことは、日本人の共通認識としては、確認しなくてもわかることだが、それは日本人がそう思っているだけで、文化の違う中国人には理解できないことなのだ。

 そんなエピソードをもつKさんもいまではイトーヨーカドーの日本式の経営に心底惚れて、重要な立場になっているとのことだ。

 新しい事業をするときには、形などないのは当たり前のことだ。私は特別中国との関係はないのだが、日本全体で考えた場合には、中国は難しい、とあきらめるのではなく、一つ一つ丁寧に仕事をすすめていくことだろうと思った。
 
 参考文献:『中国ゴールドラッシュを狙え』 財部誠一 (新潮社)
 

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