『拝金社会主義中国』を読んで

Hitoshi Yonezu

2010年03月15日 10:00

 景気の回復が伝えられる中国だが・・・

 2009年の中国の大学卒業生611万人のうち、就職できたのは415万人で、就職率は68%だったという。
 なかには、内定証明書をもっていないと、卒業証明書を出さない大学もあるそうで、この数字も怪しいらしい。

 2000年の大学卒業生は107万人だったそうだから、この9年で大学卒業生は6倍近くになったのだが、企業の求人が追い付いていない。

 先般、大連を訪問したときに、新しい立派な医科大学があったので、何人くらいの学生がいるのか?と尋ねたら、30,000人もの学生がいるという。中国の医学部は5年制だから、1学年6,000人もの医学生がいることになる。医学生ならまだいい。
 
 中国はその経済発展の過程で、国際分業のうち、おもに製造加工の役割を果たしてきたから、そもそもホワイトカラーや研究開発のポストのニーズが少ないそうだ。

 そのため、ホワイトカラーを目指す新卒の賃金は低くなってしまう。

 いまでは、農民工(農民でありながら雇用主に雇われて働く肉体労働者のこと)のための就職説明会を回るピカピカの新卒もいる。
 その希望月収は農民工の平均月収の半分の1000元程度(約14,000円)だという。

 中国は地域によって経済格差があるから、賃金を一概に言うことはできないが、私が聞いたところによると、大連では、一般の大卒生の初任給は2500元程度(約35,000円)、日本語が出来る大卒生で3000元程度(約42,000円)とのことだった。

 一杯5元(約70円)の中国麺、9元の(約126円)の日本風豚骨ラーメン、初乗り8元(約112円)のタクシーが一般生活だと思えば、一人600元(約8,400円)もするレストランで悠々と食事をする方もいる。
 街ではベンツやBMWやレクサスやポルシェをよく見かける。
  
 発展途上の国故に、モノの価格がアンバランスだ。現地にいくと、経済指標では分からないいろいろなひずみが見えてくる。
 
 参考文献:『拝金社会主義中国』 遠藤誉 (ちくま新書)
 

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