矢場とんの経営の秘密
矢場とんといえば、いまや名古屋のみならず、東京でも人気の、名古屋名物味噌カツのお店です。
『脱・家族経営の心得』は、矢場とんを家族経営の小さなお店から、企業へと育てた女将さんがその経営の考え方を明かしてくれる書籍です。
家業から企業へということですから、ドラッカーのマネジメントの話でも出てくるのかな?うちにも参考になりそうだな~と思いつつ読み始めたのですが、私が考えていたマネジメントとはかけ離れた内容で、少々驚きました。
うれしいことがあるとお客さまにサービスをしたり、マニュアルがない社員教育の仕組みだったり、社員の住宅ローンの保証人になってあげたり、仏の教えを大切にすることだったり、・・・女将さんの人間性の高さがこの企業の経営を支えていたのでした。
聞くところによれば、私のおばあさんも、戦前戦後の混乱期に、ささやのお客さまに対して、儲けを考えずに、ただ心の感じるまま、好きなようにおもてなしをしていたそうです。
おばあさんが、学生さんやお金のない人に無料でご飯を食べさせてあげていたという話を、いまだにご高齢のお客さまから伺い、感謝されています。
「損して得とれ」と、うちのおばあさんはよく申しておりましたが、おそらくずっと損ばかりで、自分が得をしようとは考えていなかったと思います。
私から見ると、厳しくて趣味もなく地味で質素な人でした。
うちの商売の原点は、まずはそこにあったわけです。
矢場とんさんでも、女将さんの想いが商売の基礎にあったのです。
参考文献:『脱・家族経営の心得』 藤沢久美 (幻冬舎)
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