家業とマネジメント

Hitoshi Yonezu

2009年07月14日 15:21

 先日、『7つの習慣』を読んで、マネジメントの話を書いた。
 参考:『リーダーシップとマネジメント』
 http://highlyeffective.naganoblog.jp/e280497.html

 家族で商売をしている友人が、これを読んで、
 「うちもマネジメントの体制を作らなくてはいけないと思って・・・」
 と言うので、もう一度、考えてみた。
 
 例えば、大手の飲食チェーン店はマネジメントが成功している典型である。特別の能力をもった職人さんがいなくても、パートさんなどを使いながら、一定のレベルの料理やサービスを提供している。本部の考えたマネジメントの体制にしたがって、何百人という店長がそれぞれの店でマネジメントを実行しているのである。ごく普通の人材がいれば、次から次へと、まったく同じレベルの新しいお店を出店できるのだ。

 一方、親方と女将さんの夫婦を中心に経営している割烹では、マネジメントの必要がない。腕のよい親方が、おいしいお料理を確実に作ることが出来るし、女将さんが常連様を大切にして、丁寧な接客をするから、お店の繁盛は間違いがない。
 親方は家業の経営者として、お客様に喜んでもらうことを考えているが、お店を増やしていこうということは考えていないだろう。

 これは、両極端の例だが、どちらが良いか、という問題ではない。

 チェーン店は一定の水準を保つことで、受けられるサービスを予想できるから、安価で安心して利用でき、いつ誰が行っても喜ばれる。

 割烹は、親方にしか作れないおいしいお料理を食べることができて、自分を認識してくれる品質の高い接客があるから、常連のお客様に喜ばれる。お客様は親方や女将さんとの会話まで含めて楽しまれるのだ。

 お客様は、どちらの形も求めている。

 一つの違いは、代えができるかどうかという点である。チェーン店なら教育された次の店長を連れてくれば営業を維持できる。
 割烹の場合は、親方が体調を崩したときや、代替わりをしようとするとき、それを引き継ぐ後継者の息子さんが、親方と全く仕事ができるとは限らないということである。
 親父と味が違うぞ、と言われるかもしれない。

 私の友人の場合は、家族はみな仲がよく、しっかりした理念をもって家の仕事をされていて、業績も良さそうだから、そのままでいいと思った。
 いきなりマネジメントではなくて、家業のよさを活かしながら、だんだんとお子さんにつないでいって、規模を拡大したくなったら、マネジメント体制にすればいいじゃない?と申し上げた。

 私も家族から事業を継承したが、家業のまま経営していくには微妙に規模が大きかった。私はリーダーシップに欠け、マネジメントも理解しておらず、能力不足だった。お客様に喜んでいただくためには、解決しなくてはならない問題が山ほどある。

 いろいろと勉強していたら、マネジメントの考え方を取り入れれば、私のような非力のものでも何とか会社を維持できるのかもしれないと思った。そこで、いま懸命にマネジメントを勉強している途上である。

 何かをつないでいくという理念のある家業は、景気とか、金融とか、グローバリゼーションとか関係なく、いつまでも残ってほしい。職人とか芸術的な仕事とか、論理で説明できないものは、それはそれで大切にしたい。私にはそのような能力がないから、本当に尊敬します。
 家業が理念を大事にして、マネジメントが出来るようになっていったら、良い企業になるのだろうなあ。

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