『カネ遣いという教養』を読んで
藤原敬之さんのご著書『カネ遣いという教養』を拝読いたしました。
藤原さんは1959年大阪生まれ、一橋大学法学部卒業後、農林中金、野村投資顧問、クレディ・スイス、日興アセットなどで資産運用の業務をなさっておられました。現在は波多野聖のペンネームで小説を執筆されています。本名での著作には『日本人はなぜ株で損をするのか?』があります。
書店でこの本の帯に書かれているキャッチコピーに目が留まりました。
「箸置きに20万円、眼鏡に80万円、文具、オーディオに高級車一台分・・・・・・。身銭を切らなければ己は磨かれない。」
この人は一体何をしてきたのだろう???思わず手に取ってしまいました。
この本を紹介してしまっていいでしょうか・・・・・みなさまを底知れない恐ろしい世界へ引きずり込んでしまうかもしれません。
ファンドマネージャーとして億単位の収入を得ていた藤原さんは、かつていろいろなことに引き込まれ、カネを使い続けました。いまは高給を得られる職を辞し、二度の離婚でカネはすべて失ったそうですが、その散財に一切後悔をされていないそうです。
そのカネの使い方を公開したのが本書です。
破滅的な感じはしませんし、悲しい結末もありません。借金はせずに、もっている範囲内でカネを遣っていたからだろうと思います。
例えば、本の買い方については次のように述べておられます。
本へのカネ遣いで大事なのは、見つけた時に買う、ということです。
「面白そうだけど、今は必要ないか・・・・・・」
「読んでみたいけど、ちょっと高いなぁ」
そんな時こそ買うことです。
本は生モノです。眼の前に現れた時が一番新鮮で美味しい。その時に必ず買うことです。そして積ん読で良いのです。
本というソフトはパッケージが優れています。積んでおくだけで必ずそれらが目に入って来ます。そうすればいつでも手にとれます。
『カネ遣いという教養』 p61より引用
これは同感です。そのとき逃してしまったら二度と会えないかもしれません。私も本はどんどん買うので、どんどん溜まってしまいます。
本ならかわいいものですが、カメラとかオーディオとか絵画とか茶器とか時計とか、髙いものがいろいろ出てきますよ(笑)
一方、友達についてはこんなことが書いてあります。
友人へのカネ遣いは簡単です。五分と五分。それ以上でもそれ以下でもありません。
友はこの世で最も大事な存在だからです。友とは全肯定する存在です。戦略的に対応する他者とは違います。肉親や配偶者とも違います。
どんなことがあっても受け入れる。その姿勢を持って一緒にいることで気分が良いのが友です。大人になっての友とはそういうものだと思っています。
『カネ遣いという教養 p94-95より引用
遣いたいだけカネを遣うと、その先に何かが見えてくるのかもしれませんね。
カネを遣う話ばかりですが、いやらしさは感じませんでした。カネを遣うならそこまでいかなくっちゃ、中途半端に遣うよりせいせいしています。
煎茶の話などを読んだら、自分もやってみたくなりましたし。「教養」はマーケティングのうえでのひっかけですから、そういう難しい視点ではなくて読み物として読めば楽しいです。
この本を機内で読んだらおもしろくて、高揚してきて、帰り道いろいろお買い物をしてしまったことを打ち明けておきます。
みなさまどうぞお気を付けくださいませ。
参考文献:『カネ遣いという教養』 藤原敬之 (新潮新書)
関連記事