『花もみぢ 冷泉家と京都』を読んで
冷泉貴実子さんのご著書『花もみぢ 冷泉家と京都』を拝読いたしました。
今月、お客さまのご紹介で京都市にあります重要文化財、冷泉家住宅を見学させて頂く機会がありました。一般公開されていないので大変貴重な体験です。
そのときに、勉強のためと思い、あらかじめ読んでおいた本です。
冷泉家とは藤原定家、俊成を祖先にもち、歌道を家業とする公家です。冷泉貴実子さんは第24代為任さんの御長女で、第25代為人さんのご婦人です。
現在、冷泉家住宅は同志社大学の一角にありますが、かつてその一帯は公家の住宅が立ち並ぶところだったそうです。さまざまな事情で公家の住宅がとり壊されていくなか、御文庫と呼ばれる書庫と共に冷泉家住宅は残ることができました。
そこには代々の冷泉家のみなさまの歌道の文化を残していきたいという強い意志と大変なご努力がありました。いまでも冷泉家においては御文庫を神殿と考えているのだそうです。
この本は冷泉貴実子さんが冷泉家の歴史や京都について書かれた随筆集です。
京都には「いけず」という言葉があります。「意地悪」といったような意味だそうですが、信州人の私には本当の意味がよく分かりません。
京都の人はいけずである。いまだに京都が、少なくとも文化では、日本の中心であると思い続けている。経済と政治は、どうやら東京へその中心が移ってしまったようだけれど、文化の中心は京都にあると心底信じている。京都が日本の中心であり、東京なぞまったくの田舎であると本気で思っている。
一流の人が、自虐的に「東京から来た田舎者です」と言っても、まったくその通りだと誰も否定しない。だからどうしてもいけずになる。
『花もみぢ 冷泉家と京都』 p241より引用
なるほど~そうなんですね。日本の歴史では京都に御所があった時代のほうがずっと長いのですよね。
街中に点在する料亭は、いけず心で、金さえ払えば何でも出来ると思っているギャルの攻勢を食い止めているし、花街のお茶屋は、下品な酔っ払いを寄せつけない。
この京のいけず心を、宝の一つに是非数えたい。
『花もみぢ 冷泉家と京都』 p242より引用
この力強さが日本の伝統文化を守ってきたのですね・・・・・・
冷泉家のみなさまがどんな思いをされて文化を守ってきたのかよく分かる本です。和歌、歌道の伝統についても説明されています。
冷泉家住宅の見学では冷泉貴実子さんのお話をお聞きすることができました。この本を読んでおいたおかげで大変分かりやすかったです。
どうぞご参考になさってください。
参考文献:『花もみぢ 冷泉家と京都』 冷泉貴実子 (書肆フローラ )
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