『俳句いきなり入門』を読んで
千野帽子さんの『俳句いきなり入門』を拝読いたしました。
千野帽子さんはフランス政府給費留学生としてパリ第4大学ソルボンヌ校博士課程を修了、2004年より文芸誌、女性誌、新聞などに書評やエッセイなどを寄稿されている「日曜文筆家」とのことです。
プロフィールには「勤め人」とも書いてあったので、気になってWikipediaで調べましたら、某大学でフランス語の教鞭をとられているようです。道理で海外の文学からの引用が多いわけです。
千野さんは、俳句は風流な芸術でも自己表現でもなく「高度に知的な言語ゲーム」だいいます。
例えば句会といえば、俳句を作って披露する場だと思っていましたが、千野さんは次のように述べています。
「句を出すこと」が句会の参加条件ではない。「他人の句を読んで投票し、句評すること」が句会の参加条件だ。
このような考えかたはたぶん従来の俳句の世界には存在しない。俳句業界的には完全に間違っているんだろうな。
『俳句いきなり入門』より引用
千野さんはこの精神にのっとり、ライブハウスで「東京マッハ」という公開句会を開いているのだそうです。
たとえば、二〇一一年六月にやった「東京マッハ」Vol.1は、檀上の四人がやっている句会を八〇人あまりが「観ていた」のではなく、「九〇人弱で句会をやってそのうち四人が投句者だった」のである。何度も書くが、句会とは句の良し悪しではなく読みの良し悪しを競う場なのだ。
『俳句いきなり入門』より引用
俳句についての考え方もユニークです。
それは、ひとことでいえば、「俳句は、自分の言いたいことを言うものじゃない」ということ。このことをわかっていないと、いくら技術論をやってもムダだと思う。
この本で言いたい最大のことをは、「言いたいことがあるなら俳句なんて書くな」ということだ。あなたの俳句の最大の敵は、あなたの「言いたいこと」なのだ。
『俳句いきなり入門』より引用
引用したところだけをみるとかなり前衛的に思われるかもしれませんが、全体を通して読んでみると文章は分かりやすいですし、納得できることが多いです。
この本の論理が正しいのかどうかはよく分からないのですが、文学ですからいろいろな考え方があっていいでしょう。私にとってはおもしろかったので、すいすい読めました。
俳句を理解するためにみなさまもぜひご一読ください。
参考文献:『俳句いきなり入門』 千野帽子 (NHK出版新書)
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