ビジネスと人間の全体像

Hitoshi Yonezu

2013年05月14日 10:00

 洋画家の故岡本太郎さんは、経営者ばかりを集めたセミナーで講演をされたことがあるそうです。

 『自分の中に毒を持て』より引用します。

 壇上からあらためて聴衆を見わたし異様な気分にとらわれた。・・・・・・見るからに経営者。ビジネス、利潤追求だけに専念している。その外の人生はゴルフかマージャンだけというような。みんな同じ顔、同じ目つきで、ネクタイを締めて、ゾロッとすわっている。禿げた人、四角い顔、眼鏡、それぞれ違うのだが、同質に見える。ふと、何か異種の動物の前に立たされているような気持になった。
 ぼくは率直にその感想を話した。経済がどんなに成長しても、逆に人間喪失のむなしさはとり返しがつかないのではないか。ここからお見受けすると、皆さん、一目見て、いかにも経営者、商売人だ。それ以外の何ものでもないというところに、人間の全体像を失っている現代文明、そしてこれからの運命が象徴されている。

                  『自分の中に毒を持て』 p118より引用


 この本が書かれたのはいまから25年前の1988年です。バブル経済の絶頂期で、ビジネスはイケイケだったでしょう。

 岡本さんは、日本的経営が世界から称賛されるようになり、数字を追うことばかりになってしまった経済に警鐘を鳴らしたのだと思います。

 利潤追求をして買いたいものを買いあさった結果がいまの日本の姿か・・・・・・はっ、としました。

 小宮一慶さんは、セミナーで「儲かるくらいのいい仕事をしなさい」といつもおっしゃっています。儲けることが先にあるのではなくて、よい仕事をすることが先です。よい仕事をした結果として儲かってしまった、ということです。

 人生の中に仕事があるわけで、仕事の中に人生があるわけではないということは確かです。

 岡本さんは、いまの私を見たらなんと言われるでしょうか。

 人間の全体像を失うような人生はどこかがおかしいのです。 

  


 参考文献:『自分の中に毒を持て』 岡本太郎 (青春出版社)
 


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