上の者をたてる
森信三さんの『修身教授録』より引用いたします。
たとえば、近いうちに知事になるという総務部長の中には、人物見識共に、知事よりも立派な人もないわけではあるまいと思うのです。しかしそうした場合でも、だからとって、その人が知事を軽んじたのでは、秩序というものは成り立たないのです。またそれでは、部下もそういう人には服さないでしょう。
そもそも人間の値打ちというものは、人物としてはその上位者よりも、その人の方が優れているとしても、自分の地位が低ければ、それ相当に相手を立てて尊敬するところに、初めて人の心を打つものがあるわけであります。
森信三著『修身教授録』第31講214pより引用
上の立場の方や年長の方を敬うというのは、日本の素晴らしい文化だと思います。
この講義がなされた昭和12年~14年ころは、この傾向はいまよりもずっと強かったことでしょう。
ビジネスのスピードが早くなり競争も激しくなった昨今では、下の者が上の者にものを申さねばならない場面が多くなってきました。上下の立場が逆転するという事態も頻繁に起こるようになりました。
悩ましい問題です。
仕事の面では、成果を上げ、企業を継続させることを最優先せねばなりません。
もしもそのために人事の体制が変わったとしても、下位の立場にいたものは、かつての上司を尊敬する態度は持ち続けるべきです。
仕事の成績が悪いことと、人格や人間性は全く別のことだからです。
これはその人の生き方の問題に関わってくることだと思います。
参考文献:『修身教授録』 森信三 (致知出版社)
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