『日本料理の贅沢』を読んで

Hitoshi Yonezu

2013年12月11日 10:00

 神田裕行さんのご著書『日本料理の贅沢』を拝読いたしました。

 神田さんは1963年徳島県生まれ、大阪で日本料理の修業後、パリ、徳島、東京などで料理長を務め、2004年に独立して東京、元麻布に「かんだ」を開業されました。同店はミシュランガイド東京において3年連続で三ツ星を獲得されているそうです。(この本は2010年9月20日に第一刷が発行されています。)

 今月「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたという明るい話題が飛び込んできましたが、この本はまさにその理由を説明するようなような内容です。
 
 「かんだ」には行ったことはありませんし、この本でしか神田さんのことは存じませんが、日本料理ってすごい!日本に生まれてよかった!と思いました。私はワクワクしながら読みましたよ。

 日本料理は三口目が勝負です。一口目でおいしいと思うような味付けはすぐに飽きると思います。おばあちゃんが炊いてくれる煮しめのような、あっさりとしていながらも、食べ進むと癖になる味わいを目指したいものです。

               『日本料理の贅沢』 p27より引用


 日本料理は毎日食べてもまったく飽きることがありません。(それぞれの国の住民にとってその国の料理はそういうものなのかもしれませんが・・・・・・)

 素材についての知識は大変深いです。

 夏の鯛は麦わら鯛と呼ばれ、あまりおいしくありません。産卵のシーズンを終えてやせてしまっているのです。
 夏の白身といえば、鱸という方が多いですが、僕は好きではありません。河口の魚の悲しさで、どうしても泥臭く感じるのです。
 夏はなんといっても鰈。しかも鳴門の真子鰈の一キロものは、非の打ちどころのない味わいです。透明感のある味わい、ほのかにクリーミーな香りの切り身に、塩と山葵を付けて食せば、昼の暑さも忘れるほどです。

           『日本料理の贅沢』 p39より引用

  
 「あとちょっと」と思って、結局塩を足しすぎて料理をだめにしてしまったことはありませんか?
 
 なにかが足りない、と思うとき、ちょっと調味料が足りないのかなと思って塩分で調整してしまいがちです。でも塩分を足すのでなく、香りとか酸で加算していったほうがいい結果が生まれます。

              『日本料理の贅沢』 p87より引用


 神田さんは大変有名な料理人になったわけですが、いまは楽になった、と述べておられます。

 三〇歳代の自分には、なにか難しいことをして認められようという気持ちがあったのですが、今は、必要であれば、何もしないという選択も堂々とできるのがいい料理人なんじゃないかな、と思えるようになってきました。

            『日本料理の贅沢』 p196より引用

 
 日本料理の技術や、食べ方などについて、神田さんの考えが事細かに述べられていています。一流の日本料理の料理人の気配りはどんなものなのかが分かります。

 家で料理をする場合のちょっとしたコツのようなものも随所に紹介してくださっています。これは使えそうですよ。

 日本料理に興味のある方はぜひ読んでほしい本です。

  


 参考文献:『日本料理の贅沢』 神田裕行 (講談社現代新書)
 



関連記事