『また、あの人と働きたい』を読んで 

Hitoshi Yonezu

2013年10月15日 10:00

 黒岩功さんのご著書『また、あの人と働きたい 辞めた社員が戻ってくる!人気レストランの奇跡の人材育成術』を拝読いたしました。

 黒岩さんは1967年鹿児島県生まれ、19歳で調理師免許を取得し、21歳で全国司厨士協会の調理師派遣メンバーとしてスイスに渡られたそうです。ヨーロッパの三ツ星レストラン「タイユヴァン」他で3年間フランス料理を学び、帰国後、いくつかの有名料理店でスーシェフ、料理長を務めたのち、2000年大阪にフレンチレストラン「ル・クロ」をオープン、現在は3店のフレンチレストランを経営するかたわら、食育の講演会なども行っておられるそうです。

 題名のとおり、黒岩さんのご経験からいかにお店の組織をつくり育んでいくかを教えてくれる本です。

 当社も人材や組織の面で問題を抱えているので、ヒントを見つけるつもりで読みました。

 「ル・クロ」1号店では、オープンさせてから今までの12年間で求人広告を出したのは、たったの2回だけだそうです。

 常に人材不足に悩まされている飲食業界としては考えられないことです。

 なぜ人材採用に困らないのか、その理由はいくつか考えられます。
 そもそも、よい人材がお店を辞めずに残ってくれるということ、また一度辞めても戻ってくれる社員がいること。そしてもう一つ、社員がいい辞め方をしている、というのがあると思います。
 スタッフたちは、人が辞める様子を実によく見ているものです。だからこそ、彼らにいい辞め方とはこういうことだとわかってもらえます。また、いい辞め方ができるよう、僕らも最大限の努力をしたいと思っています。

          『また、あの人と働きたい』 p123より引用
  
 
 いい辞め方とは、三カ月前、半年前から準備して、仲間や組織に敬意を払って、迷惑をかけないように辞めていく方法です。逆に悪い辞め方とは法律の条文に従っているからと相談もなく突然出て行ってしまうものです。

 いずれの場合も、辞めていく人だけに問題があるのではなく、上司または組織に責任があると考えるべきです。
 
 辞める話を相談されたら、上司としては組織の運営のことで頭がいっぱいになってしまいますが、黒岩さんは家族のつもりで率直に答えます。

 上司としてではなく家族として話すというのは、「会社を守るため」ではなく、「その子の人生を守るため」に意見を言う、という意味です。

          『また、あの人と働きたい』 p126より引用 


 これは本当に大切なことです。人が辞めてしまう組織には、こういう人間対人間のコミュニケーションが欠けていることを感じます。

 「ル・クロ」には「フリーフェンス」という考え方があるそうです。

 「ル・クロ」は「フリーフェンス」という言葉を掲げています。というのも、とくにトップ陣に対して「部署の壁は絶対につくるな」と言い聞かせてあるのです。僕はトップ陣たるもの、自分が担当する部署という狭い範囲の責任のみではなくお店全体、つまり経営に対して責任を持ってほしいのです。

         『また、あの人と働きたい』 p150より引用 


 料理が遅れている状況をみてキッチンの仕事の悪さだけを責めるのではなく、そのとき自分の部署ではどういう貢献ができるのかを考えるのが「フリーフェンス」です。

 お客さまにとってはお店の内部事情はまったく興味のないことです。お客さまにご満足していただくには、お店全体で一丸となって全力で対応することが絶対に欠かせません。

 自分には至らないところが多いということを感じます。

 飲食店を経営されている方はぜひご参考になさってください。

  


 参考文献:『また、あの人と働きたい 辞めた社員が戻ってくる!人気レストランの奇跡の人材育成術』 
                   黒岩功 (Nanaブックス)
 


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