まずは採算度外視
京セラ創業者の稲盛和夫さんのご著書『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』より引用いたします。
私は「オーバースペックでもいい、手の切れるようなものを努力を惜しまずつくるということが、まずは開発者にとって必要なことだ」と常々言ってきた。
まずは、採算を一切度外視して、最高の品質の製品を一個でもいいからつくり上げる。その後、コストを考慮に入れ、どのように量産するかということを検討していく。このような手法をとるべきだと思うのである。
製品にはつくった人の心が表れる。粗雑な人がつくったものは粗雑なものに、繊細な人がつくったものは繊細なものになる。
『ゼロからの挑戦』 p66より引用
開発者は、完璧ですばらしく、手の切れるような製品をつくるべきだ、という文脈のあとに出てくる文章です。
技術力を発揮してすばらしい製品をつくるためには、まずは採算を考えるべきではない、ということを教えてくだっているものです。
私はもう一つの読み方をしてみました。
それは、お客さまからの要求、ニーズには、まずは採算を考えないで、商品、サービスを提供してみる、ということです。
原材料を選び、製造過程での手間を計算してものをつくるのが、一般的なプロダクトアウトの考え方です。しかし、その方法では、お客さまの求めているものとは違ったものが出来てしまうことがあります。
そういう順序ではなくて、まずはお客様の求めるものを採算や手間を考えずに作ってみて、お客さまに喜んで頂く、そしてその後からその過程を検討するという方法をとってみるのです。
ヤマト運輸の小倉昌男さんが「サービスが先、利益は後」とおっしゃったことと同義です。別の言葉でいえば「先感動、後効率」です。
このように、少し変えるという程度ではなく、考え方の枠組み自体をがらりと変えてしまわなければ、新しい価値は生まれてこないのではないか、と思います。
参考文献:『新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦』 稲盛和夫 (PHPビジネス新書)
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