『損しない投資信託』を読んで
中桐啓貴さんの『損しない投資信託』を拝読いたしました。
中桐さんは1973年兵庫県生まれ、97年甲南大学卒業後、山一證券、メリルリンチ日本証券を経て、ブランダイズ大学でMBAを取得、2006年にガイアを設立し、ファイナンシャルプランナーとしてご活躍されています。
この本は、金融機関の言いなりにならないで自分で投資信託を見極める方法を教えてくれるものです。
冒頭で紹介されている驚きのエピソードです。
瀬戸内海の小豆島は人口31,000人の島ですが、この島だけでグロソブ(グローバルソブリンファンド)の投資総額が100億円を超えたことがあったのだそうです。島民の30人に一人が購入し、一人あたりの平均投資金額は1000万円にもなるそうです。ある金融機関が力をいれて販売したためだそうですが、リーマンショック後は基準価格の下落に困っている方がおられるそうです。
もう一つ驚いたことは、銀行で販売される投資信託の純資産残高が証券会社のそれと肩を並べているということです。2011年の販売金額ベースでは、ETFを除くと、証券会社の21.4兆円に対し、銀行は22.3兆円と上回っています。
長い間、預金金利が低下していたため、銀行にお金を預けている人が新たな投資先を求めて、投資信託に向かっていることが分かります。
特に毎月分配型という毎月分配金をもらえる投資信託が伸びているそうです。小豆島のグロソブもそのタイプです。
この投資信託には利益を出していないのに分配しているものや利益以上の分配をしている者があり、気をつけなくてはなりません。一般的な分配金とは違い「特別分配金」と呼ばれるものです。紛らわしいということで2012年6月からは「元本払戻金」と名前が変わりました。
これは元本を払い戻しているのと同じですので、タコが自分の足を食べてしまっているようなものです。目先はおいしい話に見えても、長期投資には向いていません。
中桐さんによれば、このような仕組みを理解せずに、大金を投資信託に預けてしまっている人が多いそうです。
投資信託の見直しという概念がよいのかどうかについてはやや疑問がありますが、ここにはいくつかの見直し事例やおすすめの「お宝ファンド」10本が紹介されています。
わからない投資はすべきではない、というのが原則です。
投資信託にご興味のある方はぜひご一読ください。
参考文献:『損しない投資信託』 中桐啓貴 (朝日新書)
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