世襲とは
京セラ創業者の稲盛和夫さんは、世襲制はとらないと公言し、実践されてこられました。
しかし、稲盛さんの勉強会である盛和塾のみなさんには真似をしてもらっては困る、と言ってきたのだそうです。
その理由は、世襲制をとった人、跡を継いだ人が後ろめたい気持ちで経営されては困ると思ったからだそうです。
上場企業ならば世襲制に批判が及ぶでしょうが、日本の中小企業のほとんどは所有と経営が分離していないので、批判される根拠がありません。
所有者であり経営者である中小企業においては、世襲していくことが現実です。この現実は簡単には壊れないでしょう。
たとえば私には子供がいませんから、次はどうするのか?と心配されます。しばらくは大丈夫ですが、やがては私が経営者として何らかの解決をする責任があります。
では世襲制のメリットはなんでしょうか。稲盛さんは次のように述べています。
このように、家業の場合には、貴方の父親から預かった財産を守りながら、従業員も守らなければなりませんが、もし貴方がサラリーマン社長に跡を継がせれば、その人は貴方の家の財産を仕事として守る必然性が希薄になります。したがって、場合によっては、従業員の雇用を守るために、会社の財産を切り売りしかねません。
このように考えると、屁理屈かもしれませんが、財産を守り通すことと、従業員を大切にするという両面を満たしながら企業を発展させていくことができるのは、世襲制の方が当を得ているということになるのだと思います。
『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』148pより引用
実際のところ、中小企業の経営者は、自分の財産を守り(あるいは破産させないようにしながら)、頑張っている社員を大切にするという両方を真剣に考えることが大きなモチベーションになっているように思います。
巨大な企業を経営されている稲盛さんがこんなことまでお見通しなのは、本当にすごいことです。
参考文献:『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』
稲森和夫(著) 盛和塾事務局編 (PHPビジネス新書)
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