中華の鉄人の仕事術
陳建一さんのご著書『「段取り」の鉄人』を拝読いたしました。
陳さんは大変有名な四川料理の料理人です。父の陳建民さんから受け継いだ民権企業株式会社(四川飯店グループ)の代表取締役社長を務めておられます。
私にとって、陳さんは「中華の鉄人」です。
1993年から6年間放映されていたテレビ番組「料理の鉄人」で「中華の鉄人」として活躍された陳さんをご記憶の方は多いのではないでしょうか。
私も当時は毎日テレビを見ておりまして、この番組は特に好きな番組でした。一時間の枠の中で鉄人と挑戦者が料理の出来ばえを争い、審査員が勝敗を決めるという内容でした。
料理人が短い時間の中でヘルプの方に指示を出しながら、料理を仕上げていく過程を見るのは大変興味深かったです。
常に片づけをしながら衛生的に仕事を進めていく料理人の姿はとても美しかったです。私は料理の出来栄えよりも仕事の進め方の優劣を見ておりました。
そんな陳さんが仕事術の本を出されました。料理人の方が仕事術の本を出すのは珍しいと思います。東洋経済という経済に強い出版社から出版されていることも不思議な感じがしました。(私にとって東洋経済は、経済学の教科書を出す出版社のイメージです。)
この本に貫いている陳さんの経営はお客様に本当に喜んで頂きたいという熱意です。そのためにはすすんでサインもするし、写真にも入ります。基本は相手の気持ちを察したサービス精神です。
あるとき部下の料理長が、任せた店舗の一か月の売上目標を自らつくって提出してきたそうです。陳さんはそれを突っぱねたのだそうです。
「お金なんて、追うんじゃない。とにかく一品一品良いものを作れば、お客さまはもう一回来てくれるし、その結果が売上につながるから、料理を作る前から売上のことを考えるな」
お金儲けを第一に考えていたら、お店はうまくいかないと僕は思っている。まず考えるべきは、お客さまに喜んでもらうこと、喜んでもらう料理を提供することだ。だから、最初から売上だけを気にしている彼の態度に、僕は怒ったわけだ。
『「段取り」の鉄人』より引用
この本を読んでいると、陳さんを仕事の鬼のように感じてしまいますが、実はゴルフが大変お好きだそうです。
なんと年間を通じて200ラウンド回ることが個人的な目標とのこと。そのためには毎年の出張の予定が分かると、それに合わせてゴルフも予定してしまうのだそうです。仕事の隙があればゴルフの予定を入れる、これも「段取り」というわけです。
料理人の仕事術に興味のある方はご参考になさってください。
参考文献:『「段取り」の鉄人』 陳建一 (東洋経済新報社)
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