道中すべてをマーケティングせよ
『マーケティング辻説法』で成毛眞さんは、国内観光を盛り上げるために「道中すべてをマーケティングせよ」と述べています。
JRが運行する「北斗星」などの豪華長距離列車は今、すぐ予約で埋まってしまう。これを中距離列車に応用する。これまで日本では鉄道車両の質が悪すぎた。ここでいう質とはもちろん世界一を誇る技術面ではなく、客にとっての快適さを指す。ここを工夫するだけでも客足はぐんと伸びる。
(中略)
これまでの観光地は、そういう認識をしてこなかった。旅館業界などが各ポイントを必死によくしても、途中の往復六時間がつまらない。いよいよ観光だと思ったら、地元の学校帰りの鼻ピアスをつけたお兄ちゃんが同じ車両にすわっていたら、白けてしまい、楽しい旅行にはなるまい。
『成毛眞のマーケティング辻説法』より引用
この部分を読んでいましたらR九州のことが思い浮かびました。
このブログでご紹介した『世界から集客! JR九州・唐池恒二のお客さまをわくわくさせる発想術』に書いてあったことです。
JR九州は他の鉄道会社には見られないユニークな戦略をもち、快適な車両を採用して旅客を取り込んでいます。
参考ブログ:
「JR九州の経営戦略」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e979846.html
「手間を惜しまない」
http://highlyeffective.naganoblog.jp/e979868.html
「道中をマーケティングする」という発想は観光だけではなくてビジネスにも応用できることです。
例えば、長野駅と上田駅の間には新幹線としなの鉄道が並行して走っています。どちらに乗ってもこの二つの駅の間を確実に移動することができます。
新幹線 所要時間:12分 料金:1,410円
しなの鉄道 所要時間:42分 料金:750円
経営者の方々にお話を伺うと、料金が高くても新幹線を利用する方が圧倒的に多いです。しなの鉄道は乗客の確保に大変な努力をされていると聞いています。
では、新幹線が選ばれるのは短時間で着くという理由だけなのか?と考えると、それだけではないと思います。
しなの鉄道は沿線に高校が多いので、朝夕は特に高校生の乗車が多いのです。となると車内は大騒ぎです。高校生だから目をつむりますが、マナーもいいとはいえません。
都内の電車も高校生が乗ってくるとうるさいですが、しなの鉄道よりほどではありません。地方のローカル線は乗客に占める高校生比率が高いからうるさくなるのだろうと思います。
こういう状況を嫌うビジネスパーソンの方々がいます。
新幹線でも制服姿の高校生をよく見かけますが、こちらは場をわきまえて静かに乗車しています。高校生比率が圧倒的に低いからです。
もしも、しなの鉄道の一編成の中の一両の三分の一だけでも有料の静かな特別席をつくったら・・・・・・
そちらを選ぶ人がいるのではないかと思うのです。しなの鉄道の快速料金がプラス200円ですから、プラス300円くらいは行けるのではないですか。それでも1,050円ですから新幹線よりまだ安いです。
「何もできない12分より、仕事ができる42分、しかも安い!」です。
私なら「読書する42分」を選びますよ!
参考文献:『成毛眞のマーケティング辻説法』(成毛眞著 日本経済新聞社)
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