『ビジネスで失敗する人の10の法則』を読んで
ドナルド・R・キーオさん著、山岡洋一さん訳の『ビジネスで失敗する人の10の法則』を拝読いたしました。
キーオさんは1927年生まれ、コカ・コーラの元社長兼COOで、12年間にわたりコカ・コーラを経営し、世界200カ国以上のコカ・コーラ・システムを活性化させました。現在は投資銀行のアレン&カンパニー会長を務める他、バークシャー・ハザウェイ、マクドナルド、ワシントンポスト、ハインツなど数多くの企業の取締役を務めておられます。有名な投資家、ウォーレン・バフェットとは長年の友人とのことで、その縁でバフェットさんが本書の序文を書かれています。
キーオさんによれば、会社がうまくいかない理由は経営者や社員の個人的資質にあるといいます。
ビジネスを失敗する10の個人的資質とは次のようなものです。
1.リスクをとるのを止める
2.柔軟性をなくす
3.部下を遠ざける
4.自分はだと考える
5.反則すれすれのところで闘う
6.考えるのに時間を使わない
7.専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
8.官僚組織を愛する
9.一貫性のないメッセージを送る
10.将来を恐れる
このうちの一つでも当てはまればビジネスは高確率で失敗するとキーオさんはいいます。
「法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する」の章に、1985年にコカ・コーラの味を変えてニュー・コークを発売したときのエピソードが紹介されています。
しかし、方針を堅持するだけではいけないと悟ったのは、八十五歳のおばあさんと話したときだ。ロサンゼルスの老人施設から涙ながらに電話をかけてきた。
私はそのときたまたま、コール・センターを訪問していて、電話を受けた。「わたしのコークをとってしまうなんて」と泣きながら訴えている。
「この前、コークを飲んだのはいつですか」
「そんなこと、おぼえていません。たぶん、二十年か二十五年前です」
「だったら、なんでそんなに悲しんでおられるのですか」
「お若い方、わたしが若かったときの記念の品をもてあそんでいるのです。それだけは止めていただきたい。コークがわたしにとってどんな意味をもっているか、おわかりですか」
この話を聞いて、はっきり分かった。問題は味覚ではないし、マーケティングですらない。
『ビジネスで失敗する人の10の法則』を読んで
キーオさんはこのことをきっかけとしてニュー・コークを元のコークに戻すことを決意します。
もう二十年以上も口にしていないコカ・コーラを自分の人生の一部のように大切に考えてくれたおばあさんもすごいですが、コカ・コーラはそれに耐えうるだけのブランド力をもっていたということです。
わたしはこれまで何度もぶつかってきたが、多くの専門家はひとつの企業を同じ業界の他企業と比較し、業界平均に基づいて利益を最大限に高める計画を立案する。とんでもない間違いだ。どの業界のどの企業も、他社と差別化し、何らかの点で独特の企業になるよう努力すべきであり、平均に近づこうなどとしてはならない。わたしはコカ・コーラ社が清涼飲料メーカーのひとつだなどと考えたことはない。わたしにとって、コカ・コーラ社は昔も今もコカ・コーラ社なのであって、それ以外ではない。
『ビジネスで失敗する人の10の法則』を読んで
私もかつては同業他社や業界の情報が大切だと思っていたので、業界のことを一生懸命学びました。いまはもっと大切なことは、自社は自社であり、自社の強みを広げ深めていくことだと思っています。
外資系の経営者の考え方ですから日本とはやや違う面もありますが、グローバリゼーションが進む現代においてはこういう本も読んでおくべきでしょう。
みなさまもぜひご参考になさってください。
参考文献:『ビジネスで失敗する人の10の法則』
ドナルド・R・キーオ(著) 山岡洋一(訳) (日本経済新聞出版社)
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