データと現場

2024年03月12日

 春になっても雪がちらつく信州です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 
 日頃は大変お世話になっております。誠にありがとうございます。

 さて、このブログではドラッカーの『経営者の条件』を読んでいます。今回は、成果を上げるための五つの条件(時間、貢献、強み、集中、意思決定)から「意思決定」について読んでみます。
  
 大統領が手に入れられる唯一の情報たる報告書なるものはまったく助けにならない。これに対し、あらゆる国の軍が、命令を出した将校が自ら出かけ、確かめなければならないことを知っている。少なくとも副官を派遣する。命令を受けた当の部下からの報告を当てにしない。信用しないということではない。コミュニケーションが当てにならないことを知っているだけである。

 大隊長自らが隊員食堂に出かけていって隊員用の食事を試食するのもこのためである。メニューを見て料理を運ばせることはできる。だがそうはしない。自ら隊員食堂に出かけ兵隊たちと同じ鍋からとる。

 コンピュータの到来とともに、このことはますます重要になる。決定を行う者が行動の現場から遠く隔てられるからである。自ら出かけ、自ら現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から遊離する。コンピュータが扱うことのできるものは抽象である。抽象化されたものが信頼できるのは、それが具体的な事実によって確認されたときだけである。それがなければ抽象は人を間違った方向へ導く。

 自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、唯一ではなくとも最善の方法である。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』 p188より引用


 ドラッカーの予想の通り、コンピュータはますます経営に入りこみ、いまでは経営に必要不可欠なものになっています。『経営者の条件』は1967年の著作ですが、当時のほとんどの人にとって、この文章の意味は理解できなかったのではないでしょうか。

 いま、コンピュータのデータはいろいろな示唆を与えてくれますが、データだけで判断することは、間違いを導くかもしれません。データによって出来上がった抽象を、具体的な事実によって確認する必要があるのです。

 「おかしいな・・・よし、現場に見に行こう!」という感じです。

 コンピュータの出現が、意思決定に対する関心に火をつけることになった理由は多い。しかしそれはコンピュータが意思決定を乗っ取るからではない。コンピュータが計算を乗っ取ることによって、組織の末端の人間までがエグゼクティブとなり、成果をあげる決定を行わなければならなくなるからである。

      P.F.ドラッカー『経営者の条件』p216より引用


 データが身近になったために、誰でも意思決定ができるようになりました。意思決定ができるということは、誰でもエグゼクティブになれるということです。

 毎日、大量のデータが吐き出されていますが、うまく活用されていません。チャットGTPは誰でも使えるようになりましたが、どれだけの人が成果を上げる使い方をしているでしょうか。
 
 データの海で船をうまく操縦できていないように思います。

 いつもご利用ありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。

 参考文献:
  『経営者の条件』 P.F.ドラッカー(著) 上田惇生(訳) (ダイヤモンド社)

 米津仁志 at 13:20  | ささやタイムズ記事 | ドラッカー

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